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📜 引用原文(出典:『ダンマパダ』第3章 第19偈)
屋根をよく葺いてある家には雨の洩れ入ることが無いように、
心をよく修養してあるならば、迷妄が心に侵入することが無い。
(パーリ語原典:
Sārāṃ bhavitaṃ gehaṃ vuṭṭhī na samativijjhati,
Tath’evaṃ bhāvitaṃ cittaṃ moho na samativijjhati.)
🪶 逐語訳
- しっかりと葺かれた屋根の家には、雨が染み込むことはない。
- 同じように、よく訓練された心には、迷い(無知・錯覚)は入り込むことがない。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
迷妄(moha) | 無明(avidyā)とも呼ばれ、仏教において「三毒」の一つ。真実を見誤る状態、誤解、錯覚。 |
修養された心(bhāvitaṃ cittaṃ) | 自己観察・瞑想・正見・内省などによって磨かれた、澄んだ心の状態。 |
屋根の比喩 | 心の備え・精神的な防御。修養により煩悩を防ぐ構造を表す。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
きちんと手入れされた屋根の家に雨が漏れないように、
整えられ、訓練された心には、迷いや誤解、混乱といった「迷妄」が入り込む余地はない。
明晰で静かな心には、真実を遮る霧は立ち込めないのだ。
🔍 解釈と現代的意義
この偈は、**「真実を見失う最大の原因は、心の訓練不足である」**と語っています。
迷いは、情報不足によってではなく、心の散乱や先入観、恐れや期待によって生まれることが多いのです。
つまり、迷いは外の問題ではなく、「整っていない内なる心の反応」なのです。
心を磨けば、物事の本質を静かに、正しく見ることができる。
それこそが、日々の訓練と内省が果たす、最も大きな役割です。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
戦略的判断力の強化 | 状況を正しく判断するには、心が曇っていないことが前提。感情や思い込みに振り回されない心の状態が重要。 |
意思決定ミスの防止 | 情報は揃っていても、「見る目」が濁っていれば判断を誤る。日々の心の調律が“見抜く力”を支える。 |
冷静なリスク評価 | 誤った期待や過度の恐れは迷いを生む。整った心は、現実を直視し冷静な対応を可能にする。 |
チームにおける思考の質 | 修養されたリーダーは、迷いの空気に引きずられず、明確で落ち着いた指針を示せる。 |
💡 心得まとめ(結びのことば)
「迷いとは、情報の不足ではなく、心の未整備である。」
「心を整えよ、真実は自然と見えてくる。」
私たちの迷いや錯覚の多くは、心が乱れている時に生じます。
怒りや欲望、焦りや不安――これらが曇りとなって、世界を歪んで見せるのです。
しかし、日々の修養によって、心が澄み、落ち着いたとき、
物事はあるがままに、正しく見えてきます。
そのとき、迷いは消え、判断は深まり、行動はぶれなくなるのです。
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