目次
■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「煙、夜、黒月、太陽が南に向う六カ月。そこにおいて、逝去したヨーギンは月光に達してから回帰する。」
――『バガヴァッド・ギーター』第8章 第25節
■逐語訳
煙(けむり)、
夜(暗き時間)、
黒月(新月)、
太陽が南へ向かう六カ月(ダクシナーヤナ)――
この期間に死を迎えた修行者(ヨーギン)は、
まず月光(チャンドラ・ローカ=月の界)に達し、
そこからまた現世へと回帰(輪廻)する。
■用語解説
- 煙・夜・黒月・南進の太陽:いずれも「暗さ」「下降」「陰」を象徴する。霊的には、未熟な魂の歩む道とされる。
- 南に向かう六カ月(ダクシナーヤナ):冬至以後の半年間。ヴェーダ思想ではウッタラーヤナと対をなし、霊的に劣位とされる。
- 月光に達する(チャンドラ・ローカ):輪廻の中間的世界で、一定の徳のある魂が一時的に休息する場所。しかしそこに永住はできず、いずれ再生する。
- 回帰する:再び生を受けてこの世界に戻ること=輪廻の継続。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、暗き象徴(煙・夜・新月)や南に向かう太陽の時期に死んだヨーギンは、月の領域に至った後、再びこの世に生まれ変わると言う。
そこには一時の報いはあるものの、最終解脱ではない。
■解釈と現代的意義
この節は、解脱への“光の道”に対して、“再帰の道”を説いています。
霊的成熟が十分でなければ、たとえ修行していても、「月の光」に至ってなお再びこの世に戻らざるを得ません。
これは比喩的に、「目的に向かって努力しても、その道が明確でなければ、一時的な成果にとどまり、根本的な変化には至らない」ことを示しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
成果と本質の違い | 一時的な成功(報酬・評価)を得ても、本質を理解していなければ、また振り出しに戻る可能性がある。 |
意図の明確化 | 行動に“光”がなければ(動機があいまい・方向が不明瞭なら)、本来の成果には至らず、同じ問題を繰り返す。 |
成熟した撤退 | うまくいかない撤退も、学びのないままならまた同じ地点に戻る。意識の深まりが次の解脱につながる。 |
■心得まとめ
「目先の月光では、永遠の夜を照らせない」
一時の光に満足せず、
根本の明るさ――自己の本質――に到達せよ。
中途の成果で終わるか、
真の自由を得るかは、
志の深さと方向にかかっている。
コメント