目次
📖 引用原文（日本語訳）
第一九章 馬一
良い馬が鞭をあてられると、勢いよく熱気をこめて走るように、勢いよく努め励め。
信仰あり、また徳行をそなえ、精神を安定統一して、真理を確かに知って、感官を制御し、忍耐の力をそなえた人は、迷いの生存をすべて残りなく捨て去る。
――『ダンマパダ』第十九章
📘 逐語訳（文ごと）
- 良い馬は、鞭を受けるとただちに走る。
→ 優れた者は、ちょっとした教えや刺激で即座に動き出す。 - それと同じように、君も勢いよく努力に励みなさい。
→ 内なる気づきに応じて、瞬時に誠実な行為に移すことが求められている。 - 信仰・徳行・統一された精神・真理の理解・感官の制御・忍耐を備えた人は、迷いの生存を完全に断ち切る。
→ 霊性と実践の力を兼ね備えた人は、輪廻の苦しみを超越できる。
🧩 用語解説
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 良い馬 | 教えや警告にすぐに反応する感受性・理解力の象徴。 |
| 鞭（むち） | 仏の教え、または人生の痛みや気づきを促す試練。 |
| 信仰（サッダー） | 仏法僧に対する確信と心からの信頼。 |
| 徳行（シーラ） | 道徳的行い、五戒・八正道などを実践する生活態度。 |
| 精神統一（サマーディ） | 心を一つに集中し、雑念を離れる瞑想の境地。 |
| 感官の制御 | 欲望や感情に振り回されず、自己を律する力。 |
| 忍耐（カンティ） | 苦しみや困難に打ち勝ち、静かに持続する強さ。 |
💬 全体の現代語訳（まとめ）
優れた馬が小さな刺激ですぐに駆け出すように、賢明な人は教えや経験に対して迅速に反応し、努力に取りかかる。信仰・徳・集中・真理理解・感情の制御・忍耐という六つの資質を備えた者こそ、迷い（＝サンサーラ）から脱し、解脱に至ると説かれている。
🧠 解釈と現代的意義
この節は「受け取る力」と「即座の実行」を重視している教えです。
現代の私たちは、多くの情報や気づきに触れても、なかなか行動に移せないことがあります。しかし、良馬のように「気づいた瞬間に動ける」人間こそ、変化や成長を遂げるのです。
また、信仰や徳行、精神の集中といった内面の強さも「持続的変化」を可能にする柱であると説いています。現代社会の喧騒の中でも、心を調えた人だけが本当の自由に近づけるという厳しくも深い示唆です。
🏢 ビジネスにおける適用
| 観点 | 適用例 |
|---|---|
| フィードバックの受容性 | 上司や顧客からの指摘を「鞭」として即座に理解し、反発せずに動く感受性が、優れたビジネスパーソンをつくる。 |
| 即断即行の精神 | 迷わず、すぐ行動できるスピード感が、変化の速いビジネス環境で成果を生む。 |
| 自己修養と継続力 | 徳を積み、雑念を制御し、内なる集中力を高める日常習慣が、継続的成果を支える。 |
| 忍耐と継続の力 | 短期的成果に一喜一憂せず、地に足のついた継続力を発揮できる人材が、組織の信頼を集める。 |
🧭 心得まとめ
「良馬のごとく、一つの言葉で即座に目覚めよ。行動こそが、悟りの門である」
行動をためらうな。ほんの小さな気づきが与えられた瞬間に、即座に、誠実に取り組むこと。
その一歩が、人生もビジネスも、迷いの連鎖を断ち切る鍵となる――それが、この節の教えです。
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