慈しみの一念は、百年の供物にまさる

2025年6月25日

📜 引用原文（日本語訳）

第二四章　二五
たとい百年のあいだ、毎月千回ずつ祭祀を営む人がいても、
その功徳は、慈しみの心（の功徳）の十六分の一にも及ばない。
——『ダンマパダ』

もし誰かが百年間、毎月千回の宗教的な祭祀を忠実に行ったとしても、
すべての生きものに対する“慈しみの心”をもって行動することによる功徳には遠く及ばない。

用語	解説
祭祀（さいし）	古代インドにおける形式的宗教儀式。火に供物を捧げ、神に祈る行為などを含む。
慈しみ（メッター）	仏教における四無量心のひとつ。「すべての存在が幸福であるように」と願う、見返りを求めない純粋な思いやりの心。
十六分の一にも及ばない	比較として非常に小さいという強調表現。わずかでも“本質的な徳”の方が形式的努力より勝ることを示す。

どれほど長きにわたって宗教儀式を行っても、
他者を思いやる慈しみの心によって得られる徳にははるかに及ばない。
行為の大きさではなく、心の質こそが尊ばれる。

この偈は、仏教における核心的価値のひとつ――慈（メッター）の絶大な力を語っています。
儀式や見える努力は他者の目に映るものですが、「すべての命あるものを思いやる心」は目に見えなくとも、最も尊い行為であると説かれています。

この思想は、“DoingよりBeing（どうあるか）”の重視とも言い換えられ、現代社会にも深い示唆を与えます。

観点	実務での応用例
リーダーシップ	命令や統制より、メンバーを思いやり、育てようとする心が組織の活力を高める。
社内文化	形式的制度より、他者を慮る文化（例：配慮あるコミュニケーション）の方が働きやすい職場を生む。
カスタマー対応	マニュアルに沿うより、お客様の立場に立った心ある一言が信頼を築く。
サステナビリティ	利益や効率だけでなく、社会や環境への“慈しみ”を事業の軸に据える企業が支持される時代に。

「慈しみこそ、最上の供物」
真心から人を思う一念は、千の儀式よりも強い力を持つ。
他者を幸福に導こうとする態度は、静かで見えにくくとも、世界を最も深く癒し変えていく。
ビジネスの現場でも、“思いやり”は最も大きな価値を生む無形資産である。

この偈は、三宝（仏・法・僧）と戒を信じる功徳を超えて、個人の内面から発する「慈心」の尊さを高らかに宣言したものです。

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