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■引用原文(日本語訳)
「一族を滅ぼす罪をよく知る我々が、この罪悪を回避する道を知らないでよいはずはない。」
―『バガヴァッド・ギーター』第1章 第39節
■逐語訳(一文ずつ)
- 「我々は、一族を破滅させることの罪深さを、
- よく理解している者たちである。
- であるならば、
- この罪を避ける方法を知らないはずがない。
- にもかかわらず、それを選ばぬなら、
- それは明確な誤りである。」
■用語解説
- 一族を滅ぼす罪(クル・クシェヤ・ドーシャ):単なる個人の死ではなく、家系・血統・伝統・価値観・社会秩序全体の破壊。
- 罪悪(パーパ):倫理的・霊的に悪とされる行為。カルマとしての負債も含む。
- 回避する道(ヴィナシェヤ・パンタハ):破滅を防ぐ行動。ここでは戦わないという選択や、争い以外の解決手段を意味する。
■全体の現代語訳(まとめ)
我々(パーンダヴァ)は、一族を滅ぼすことがどれほど重大な過ちかを深く理解している。
であるならば、それを避ける方法を知らないはずがない。
知識を持っている者が、それを行動に反映できないのであれば、それは知らない者以上に罪深い――アルジュナはそう自問し、自省している。
■解釈と現代的意義
この節は、「知識と行動の不一致」の危険性を鋭く指摘しています。
どれほど善悪を理解していても、実際に正しい行動を取らなければ意味がない。むしろ、理解しているがゆえに、その行動の責任はより重い――という教訓です。
現代においても、倫理・理念・ルールを知っていながら、それを実践できない人・組織は、結果として無知以上の信頼損失を招きます。
「知っているのに、やらない」が、もっとも信頼と品位を損なうのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
倫理の実践力 | 倫理研修や理念を掲げるだけではなく、それを意思決定・行動に反映させなければ逆効果になる。 |
知識と行動の整合性 | 法令順守・コンプライアンスなど、「知っていたが見逃した」では済まされない状況が増えている。 |
リーダーシップの信頼性 | 指導者は「正しいことを知っている人」よりも、「それを自ら体現している人」が信頼される。 |
自己省察の促し | トラブルや対立の際に「本当に私たちは最善を尽くしたか? 正しいと知りつつ避けていないか?」と問い直す文化が大切。 |
■心得まとめ
「知っているなら、行動せよ。それが誠実の証」
アルジュナは、「一族を滅ぼす罪」を知っていながら、それを防ごうとしない自分たちの矛盾に気づき始める。
現代の私たちもまた、知識を持っていることに満足せず、「知っていることを行動に移す勇気と誠実さ」が問われている。
次の第40節では、「一族の破滅によって道徳・伝統・社会制度が崩壊する様子」が語られ、より広い視点からの危機意識が示されていきます。
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