■ 引用(出典)
一六
花を摘むのに夢中になっている人が、
まだ財産が集まらないうちに、
死神がかれを征服する。
(『ダンマパダ』第18章 第16偈)
■ 逐語訳
- 世の楽しみ(花)に夢中になっている者がいる。
- その人はまだ「十分な財産が集まっていない」と感じている。
- しかしその途中で、
- 死神がやって来て、彼の命を奪ってしまう。
- 執着の果てに、何も残らないまま征服されるのだ。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
花を摘む | 快楽・欲望・所有への執着、世俗的な追求。 |
財産(富) | 物質的な成功、貯蓄、社会的地位、利益などの象徴。 |
死神が征服する | 突然の死によって、すべてが断ち切られること。 |
まだ集まらないうちに | 「まだ足りない」「もっと欲しい」という心の無限ループ。 |
■ 全体現代語訳(まとめ)
花を摘むこと、すなわち財産や楽しみに夢中になっている間に、
その人は「まだ足りない」「もっと集めなくては」と思い続ける。
だが、欲を満たす前に――死神は静かに現れて、その人生を終わらせる。
執着の最中に、真の目的を見失ったまま征服されるのだ。
■ 解釈と現代的意義
この偈は、「もっと欲しい」と思っているうちに、人生そのものが終わるという現実を、静かに、しかし厳しく突きつけています。
人は「まだ足りない」と思って生きるものですが、仏教はその「足りなさ」の感覚が幻想であり、真の安らぎは**「今あることに気づく」こと**から始まると教えます。
富を追い求めること自体が悪なのではありません。
問題は「今を犠牲にして、得られるかどうか分からない未来のために生きてしまうこと」です。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用の仕方 |
---|---|
過剰な拡大思考への警鐘 | 売上、利益、拡大に囚われすぎると、事業の本質や人間関係を見失う。 |
資産と生き方のバランス | 「いつか落ち着いたら…」ではなく、今の生活や人間関係に幸せと意味を見出せているか? |
経営の継続性と後継 | 「財を残す」ことに執着するより、「志」や「理念」を残すことの方が大きな価値になる。 |
幸福設計と有限性の認識 | 人生とキャリアは有限。働きながらも、自分が本当に果たしたい価値に気づく時間を持つことが、幸福な成果につながる。 |
■ ビジネス心得タイトル
「富を求めるうちに、命を失わぬように」
「もっと稼ぎたい」「もっと成功したい」
そう思っているうちに、人生は静かに終盤を迎える。
死神は、帳簿や残高を確認しない。
あなたが、どれだけ生きたか、どれだけ愛したか、どれだけ与えたか
それだけを見ている。
この第十六偈は、**「執着と生の有限性」**を結びつけて、現代人に「本当の成功とは何か?」を問いかけます。
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