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■原文(日本語訳)
「その報いはわたしには来ないだろう」とおもって、悪を軽んずるな。水が一滴ずつ滴りおちるならば、水瓶でもみたされるのである。愚かな者は、水を少しずつでも集めるように悪を積むならば、やがてわざわいにみたされる。
(『ダンマパダ』第九章「悪」第121偈)
■逐語訳(一文ずつ訳)
- 「その報いはわたしには来ないだろう」とおもって、悪を軽んずるな。
→ 自分だけは罰を受けないと思って、悪を軽視してはいけない。 - 水が一滴ずつ滴りおちるならば、水瓶でもみたされるのである。
→ ほんの小さな量でも、繰り返されればやがて大きなものになるという例え。 - 愚かな者は、水を少しずつでも集めるように悪を積むならば、やがてわざわいにみたされる。
→ 愚か者は小さな悪を繰り返し積み重ね、やがて人生全体が苦しみで満たされるようになる。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
報い | 行為に対する結果(カルマ)。悪行に対しては災いとして現れる。 |
悪を軽んずる | 小さな悪や違反を「たいしたことではない」と考えて無視すること。 |
水瓶のたとえ | 微細な行為も積み重なれば大きな結果になるという因果の象徴。 |
愚かな者 | 善悪の因果を理解せず、刹那的な判断や慢心で行動する者。 |
わざわいにみたされる | 悪の結果が心身に降りかかり、人生を苦しみで覆い尽くす状態。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
「これくらい大丈夫」「誰にも見られていない」と思って、悪を軽視してはならない。
ほんの些細な悪事でも、それが繰り返され積み重なれば、やがて大きな苦しみとなって自分に返ってくる。水瓶が一滴一滴で満ちるように、小さな悪も侮れない。因果は、気づかぬうちに深く根を張っていくのだ。
■解釈と現代的意義
この偈は、「小さな悪の危険性」を明確に説いています。
現代社会では、ルール違反やモラルの逸脱が「このくらいなら」「皆やっている」として正当化されがちですが、ブッダははっきりと警告します――「一滴の悪もやがて大河になる」と。
日々の微細な選択が、人格と運命を形づくるのです。小さな悪を軽んじない倫理観が、人生の安全と安寧を守る基盤になります。
■ビジネスにおける解釈と適用
テーマ | 応用解説 |
---|---|
コンプライアンスの綻び | 「少しぐらいなら」「バレなければ」といった判断は、後々大きな信頼喪失や法的問題を引き起こす。 |
日常の小さなズレ | メールの虚偽報告・数字のごまかし・軽い陰口など、一つ一つは小さくても、積み重なれば文化を腐らせる。 |
倫理リーダーシップ | 自身の振る舞い一つひとつが、周囲に模範となる。「軽んじない姿勢」が組織の風土を育てる。 |
習慣の力 | 悪習慣は徐々に基準を下げ、判断を鈍らせる。早期の気づきと是正が肝要。 |
■心得まとめ
「その一滴が、やがて運命を決める」
大きな失敗は、小さな「まあいいか」の積み重ねから始まる。
軽い嘘、些細な怠慢、人を傷つける一言――それらが水滴のように積もれば、人生の器はやがて災いで満ちる。
だからこそ、一つひとつの行為を丁寧に、誠実に。
その「小さな意識」が、人生の質を決めるのです。
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