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たとえ世界のすべてを得ようとも、心を裏切る戦いはしない


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■引用原文(日本語訳)

「彼らが私を殺しても、私は彼らを殺したくはない。
たとい三界の王権のためでも。いわんやこの地上のためには。」
―『バガヴァッド・ギーター』第1章 第35節


■逐語訳(一文ずつ)

  • 「たとえ彼らが私を殺すとしても、
  • 私は彼らを殺したくない。
  • たとえ三界すべての支配権が与えられるとしても。
  • ましてや、地上の王国のために彼らを殺すことなど、私はできない。」

■用語解説

  • 彼ら:前節で列挙された師、父、祖父、親族など。アルジュナにとってかけがえのない人々。
  • 三界(トリ・ローカ):古代インド宇宙観における三つの世界。天界(神々の世界)、地上界(人間の世界)、地下界(祖霊や悪霊の世界)。全宇宙的支配権を意味する。
  • 王権(ラージャースヤ):統治・支配・権力の象徴。絶大な権力の獲得を意味する。

■全体の現代語訳(まとめ)

アルジュナは、もはや勝利や地位といった外的な報酬に一切の価値を見出していない。
たとえこの世だけでなく、天上界・地下界を含めた「三界」すべての支配権が得られようとも、自らの心に背いてまで「大切な者たち」を手にかけることはできないと断言している。


■解釈と現代的意義

この節は、アルジュナの倫理的・精神的決断の核心です。
彼は「自らが本当に守るべき価値は何か」を問い、たとえ世界すべてを手にしても、心の誠実さを失うような行為は受け入れられないと断ずる。

現代においても、名声・地位・利益を手に入れるチャンスがあったとしても、それが自分の信念を裏切ることであれば、その価値は“ゼロ”であるという教えです。
これは、強い信念と倫理に基づいた「不動の軸」を持つことの大切さを示しています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
信念の優先順位利益が出るからといって、不正や裏切りに加担しない。自分の理念や価値観を軸に判断する。
長期視点の倫理判断一時的な栄光(昇進、報酬)であっても、信用や人間性を損なえば長期的には損失となる。
誠実なリーダー像周囲に「自分はたとえ得をしても、信頼を壊すことはしない」と示せる人は、深く尊敬される。
価値の本質を問う「それを得たところで、自分の魂は満たされるのか?」という問いを常に持つこと。

■心得まとめ

「失っても守るべきものがある。信念を売って得たものは、何の価値もない」
アルジュナは、三界すべてを支配するほどの見返りがあったとしても、愛と倫理を裏切る行為は選ばない。
現代の私たちもまた、目の前の「大きな報酬」に目を奪われそうなとき、自らの軸と良心に立ち返り、「何が本当に価値あるものか」を見極める必要がある。


次の第36節では、アルジュナが「敵が悪をなしたからといって、自分も悪をなしてはならない」という、さらに深い道徳的判断へと進んでいきます。

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