地道なことを徹底してやる
経営をよく知らない人は、儲ける力というと、何か派手なことをやつたり、特別な方法があって、そこを突けば成功できると錯覚している人がいますが、そんなことは全くありません。
経営というのは、あたり前のことを本当にあたり前に毎日実行する。そしてチェックをし、次の方法を考える、計画を変える。このことの繰り返しです。
本当の儲ける力とは、こんな地道なことが徹底してできるところにあるのです。
派手なイベントをやって集客しても一過性です。
リーマンショツクのあと、アメリカのビッグ3と呼ばれる自動車メーカーが企業再生となりました。再生前は、経営の本質から外れたことをやつていました。
例えば、報告書としての数値をよく見せるために、売上がよくないとリストラをして表面的なコストカットをするとか、あるいは「今購入すれば三千ドル浮きますよ」といった短絡的な販促を派手にやることです。
当然、販促が終われば、お客様は来なくなるから売上がダウンする。だから、また派手な販促をする。こんなことを繰り返していたら儲かるはずがありません。
経営にとって大切なことは、 一日一日、一人ひとりのお客様を大切にすること。そして、日々無駄を省く努力をし、あらゆるプロセスをコツコツと工夫して改善していくことです。
非常に地道なことですが、あたり前のことをしつこく継続的に実行できる会社だけが、成長し続けることが可能なのです。
毎日の充実の中に未来がある
特に、我々のような小売業の商売は毎日続くものです。店を開けた瞬間から、そこには「毎日」が訪れるのです。
毎日を大切にする。日の前のお客様を大切にする。それが基本ですし、全てなのです。それができないと、お客様は来てくれなくなりますから、未来なんて作れないのです。
売上高目標一兆円も、五兆円も、世界一のアパレル製造小売業になるといゝつ禾来も、今日という毎日、今の目の前にいらつしやるお客様、ここがきちんとできていないと絵に描いた餅にすぎなくなるのです。
世の中にはこれを勘違いしている人が非常に多いです。理想や夢というのはどこか別なところにあって、そのためにやることは、日々やることとは違った特別なことだと思っている人。
しかし実際は別個のものではない。つながっているのです。毎日の充実の中に未来があって、日の前の現実の課題解決の中に理想にいたる道があるのです。
我々は毎日お客様から投票を受けているようなもので、その投票の結果が売上金額です。売上金額が計画未達ということは、投票で我々の商売が不満だというふうに言われていることと一緒だと思わないといけません。
だとしたら、今のこの現実の不満みたいなことを、真剣になって、今の現実としてつぶしていかない限り、お客様はどんどん離れていきます。
「すみません、半年ほど待っていただけますか。きちんとやっておきますので」などという商売をやっている会社に、未来が、理想が手に届くわけがありません。
能力の問題ではなく習慣の問題
いかがでしょうか。毎日毎日のあたり前のこと。みなさんの職場ではどんなことがありますか。問題があったら解決していますか。例えばお店では次のようなことがあります。あなたのお店では、毎日しっかりできていますか。
- ●清掃が行き届いていて、常に清潔で気持ちのいい状態にする。バックヤードもきれいで、商品を探しやすく、働きやすい環境にする。
- ●商品陳列はお客様から見て分かりやすく、美しく、きちんと整った状態にする。乱れているところがあったらすぐ直す。
- ●値札が見やすいように工夫する。価格表示の間違いがないか気を配る。
- ●欠品がないように適正な在庫管理をする。品出しをする。
- ●売れ筋商品で棚が構成されるようにし、死に筋商品を排除する。また、そうしたことができるシステムを作る。
- ●スタッフが元気で明るい接客ができるようにする。できていない人がいたら指導をする。
- ●お客様からのクレームは適切に対応し、三度と発生しないようにスタッフで共有して問題解決をする。また、そうした情報やその他気づいた情報を本部にあげる。
- ●毎日毎日、偏執狂的なほど、商売の結果を見て、自分で問題を発見して、 一つ一つ解決する。
企画や計画をして考えたことを、儲けに結びつけるためにはこうした細かい、 一つ一つはあたり前のこと、地道なこと、あるいはそれぞれの仕事の原理原則で記しているようなことをコツコツと毎日あたり前に実行し、問題があつたらその都度解決をして、徹底的に積み上げていく。このことが欠かせないのです。
これは、能力の問題ではなく、習慣の問題です。ですから、本来誰にでもできることです。逆に言うと、本当の習慣になるまで、意識的に鍛えることが肝心です。
また、上の立場に立つものが率先して実践しない限り、部下はこうしたあたり前のことの実践を軽視してしまいます。もし、現場でこうしたことができていなかった時は、部下の問題ではなく、上司である自分の問題だと思うべきです。
泥臭さの中に儲けの道がある
例に出して、本人には申しわけないのですが、こんなこともありました。
今は経営幹部になって会社を引っ張つていつてくれている人ですが、その人が入社してまだ間もない時、自分がトイレ掃除をすることに対して不満を言ってきました。
「どうして、大学を優秀な成績で卒業した自分がこんなことをするのか、自分は経営者になるためにこの会社に入ったのであって、トイレ掃除をするためではない」というのが彼の理屈です。
私はそれに対して厳しく叱りました。
「目の前の一人のお客様を大切にできない人が、何が経営者ですか。そんな人が、世界中の人を喜ばせることなんてできるわけがありません」
このような趣旨のことを言ったと記憶しています。その後、彼はこのことを強く自覚できたからこそ、経営幹部になれたのだと思います。
本当の意味で儲けるために必要なことは、地道で泥臭いことなのです。
目の前の一人ひとりのお客様を大切にして、 一日一日を大切に積み上げていく。この努力を飽きもせず、手抜きもせず、重ねられる。そういうことなのです。
商売人のこの泥臭さを大切にできることが経営者をやる人には欠かせないのです。ここに儲けの道があるのです。
商売をやっていても、きちんと儲けが出ていない時は、ここが崩れている時。そう言っても過言ではないと思います。
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