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制度の不備は現場の運用努力で補う

制度の不備は現場の運用努力で補うこうした事態を防ぐために、どうするか。もうすでに、MBOSを曲解した人事評価制度が導入されている企業では、何らかの応急措置が必要だ。筆者が行うミドル向けの研修では、しばしば、悩ましい質問が飛んでくる。「わが社の賞与査定は、〝期初目標の難易度達成度=貢献ポイント〟という決め方であり、部下が達成しやすい目標しか作らない。どうすればいいんでしょうか」そうした質問に、「根本的な解決策は、会社の人事評価制度を変えることだと思います」と答えると、質問者の顔つきがみるみる仏頂面に変化する。質問をはぐらかされたような気持ちになるのだろう。少し間を置き、「制度を変えるのは無理でも、当面策なら可能では?」と逆質問を試みる。それに対して、「この講師はいったい何が言いたいんだ、早く答えを教えてくれ」といった視線も感じるが、現場の責任者として何ができるのか、もう少ししっかりと自分自身に問うてほしいから聞くのである。どんな策でも、当事者意識を持って徹底的に考え抜いたものでなければ、すぐに実行パワーが陰りを見せる。そういう思いも込めて、「どんな当面策が打てるのか、グループごとに話し合ってみませんか」と提案するのである。グループメンバーによりけりだが、みんなで話し合うと知恵が出るし、成功事例も共有できる。「人事評価のための目標とは別枠で、本当に達成したいと願う職場目標と個人目標を設定すればよい。一人ひとりの言い分をメンバー同士が理解して、各人の力量に見合った目標を合意する。合意のためには、一対一の個人面接よりも〝目標設定ミーティング〟が有効だ」「目標達成プロセスでは、お互いが知恵を貸したり貸されたり、チームワークで職場目標も個人目標も追いかける。そうすれば、職場の一体感が高まって、雰囲気も明るくなる。うちでは、すでにやっているよ」これらはみな、研修のグループ討議で出された受講者の体験談やアイデアだ。会社の制度上の不備や不手際は、現場の運用努力で補うこと。若干、二重帳簿のような後ろめたさも感じるが、そうしなければ業績は向上しないし働きがいも得られない。現場を取り仕切るのは職場のリーダーの役割だ。このようなリーダーの使命感と前向きな努力を、筆者は支持したい。こうした二重帳簿的行動はリーダーの「やり過ごし」の一種であり、組織運営上の知恵である。学者たちの研究でも、その効用は説かれている。リーダークラスの約6割程度の人たちがやり過ごしの体験を持っているそうだ(『できる社員は「やり過ごす」』/高橋伸夫/日経ビジネス人文庫版/日本経済新聞社/2002年)。だから、後ろめたさなど持つ必要は微塵もない。業績を上げ、同時に働きがいを高めるために、また本当にチャレンジした人が報われるためにも、体を張って運用努力をしてほしい。

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