教訓の活用
成果の定義が曖昧なまま、成果主義を振り回せば、ノルマ管理か、はたまた言葉遊びの世界が待っている。そんないい加減な成果主義とMBOSとの強引な結合は、MBOSを人事評価制度のツールに貶めるだけであり、業績向上や働きがいの醸成は望めない。人事評価に対する信頼感や納得感も薄れてしまうだろう。これは筆者の妄想でも思い込みでもない。過去の成功事例や失敗経験が教えてくれる教訓である。富士通(株)などの成果主義を標榜した、先駆的な企業の果敢なチャレンジは、いくつかの教訓を生み出した。教訓は、人事評価やMBOSのあるべき姿のより深い検討を可能にしてくれる。先駆的企業の情報提供に感謝すると同時に、教訓の積極的活用を多くの企業に勧めたい。
第1章のまとめMBOS(本当の目標管理)と人事評価とは、本来、まったくの別物だ。・MBOSとは、「目標」を上手に使って、働く人々のヤル気を引き出すマネジメント法。・人事評価は「従業員の会社への貢献度」の測定作業である。ところが現実は、MBOSが人事評価の代用システムとして使われて、さまざまな弊害が起きている。・働く人々の頭の中は評価のことでいっぱいで、評価のための目標を設定する。・そればかりか、「やさしい目標で達成度を稼ぐ」などの悪しき風潮も出現する。対策は根本策と当面策の2つがある。・根本策は人事制度の再構築(経営トップ層と人事部門の主管)。・当面策は現場の運用努力。リーダーは、当面策として、自分たちにできるMBOSを考えて実践すること。・たとえば、人事評価のための目標とは別に、職場のみんなで話し合い、本当に達成したいと願う職場目標と個人目標を設定する。筆者は、成果主義そのものを否定しているわけではない。むしろ成果主義は必要だと考える。・ただし、「成果とは何か」について話し合い、合意するのが条件である
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