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実践的な商品別販売計画の立て方と不足の克服

目次

1. 商品別販売計画の基本構成と考え方

商品別販売計画は、単なる売上計画ではありません。**本当に重要なのは「加工高(粗利益)」**であり、売上高の大きさだけでは経営は成り立ちません。

たとえ売上高が高くても、粗利益率が低ければ、利益目標は達成できません。そのため、**「売上高だけを見る計画」ではなく、「粗利益を重視した計画」**が必須となります。

極論すれば、「加工高さえ確保できれば売上高は問題ではない」という考え方が出発点になります。

この視点に立ち、まず「第7表」の目標加工高の欄(①)に、利益計画で定めた目標加工高を記入することから始めましょう。これにより、利益計画との整合性が図られ、実行可能性の高い計画の土台が形成されます。

2. 現事業の商品別計画の作成手順

次に取り組むのは、現行事業における商品の売上高と加工高の記入です。ただし、すべての商品を網羅する必要はありません。売上の約80%を占める主力商品または商品群に絞って記載すれば十分です。

「商品群」の活用

  • 商品群とは:類似の特性や利益率をもつ複数の商品をひとまとめにした分類。
  • 残りの20%は「その他」として一括表記することで、計画のシンプル化と効率化を図ります。

実務手順:

  1. 各商品/商品群の売上高を記入。
  2. **予測加工高比率(粗利益率)**を実績値をもとに設定。
  3. 売上高 × 加工高比率 = 加工高 を計算。
  4. それらを合算し、「第7表」の②欄に記入。

これにより、現行事業で期待される加工高の基準値が明確になり、計画全体のベースが固まります。

3. 新事業の計画:意欲と現実のバランスをどう取るか

次に行うのは、新事業の売上高と加工高の見積もりです。ただし、実績がない新事業では、予測に不確実性が伴います。

新事業計画での注意点:

  • 過大評価は禁物:実態以上に売上を見積もると計画が空回りします。
  • 過小評価も問題:目標が低すぎると、販売努力に火がつきません。

「現実的かつ意欲的な目標設定」が求められます。

その合計値を「第7表」の③欄に記入します。

4. 最も困難な局面:「目標加工高とのギャップ」を埋める

現事業(②)と新事業(③)を合計しても、利益計画で設定した目標加工高(①)に届かないことが大半です。ここで社長は、計画立案の現実的な厳しさを痛感することになります。

この「不足分」をどう埋めるか。ここに販売計画の真の価値と難しさが集約されています。

5. 不足分を埋める実務的な方策

不足分を補うには、以下の二軸での見直しが必要です:

A. 売上増加の可能性を探る

  • 重点商品における販売促進策の強化
  • 見込みのある商品群の拡販
  • 客単価向上、新規顧客獲得

B. 粗利益率の向上を図る

  • 高付加価値商品の投入
  • 価格戦略の見直し
  • コスト削減による利益率改善

これらの取り組みには、現場の情報が欠かせません。社長自らが得意先を訪問し、市場や顧客のリアルな声を把握することが、実効性のある施策立案につながります。

6. 「裏付けのある数字」を上積みする

見直しにより目標加工高に近づいても、上積みされた数値には必ず販売促進策という裏付けが必要です。

例:
・新規顧客を○社開拓し、月○万円の売上見込み
・既存顧客への提案営業強化で単価○%アップ
・春のキャンペーンで前年同月比120%を目指す

裏付けのない上積みは、**単なる「数字合わせ」**にすぎません。こうした数字には実行プランが伴って初めて意味があります。

7. 計画が立たないときの「苦しまぎれの調整」

それでもどうしても加工高が足りないとき、最終手段として**「X」という仮項目を設定**し、未確定部分として「第7表」の④欄に記入します。

この「X」には、「計画期間中に具体策を検討する」という前提が必要です。このような対応は望ましいものではありませんが、現実的な経営の中では避けられない場面もあります。

8. 計画完成への最終調整:販売計画と利益計画の整合性

加工高が確定すると、時に売上高が利益計画とズレる場合があります。そのときは、利益計画の売上高を販売計画に合わせて修正します。

こうして数々の検討と調整を経て、ようやく現実性と戦略性を兼ね備えた商品別販売計画が完成します。

まとめ:現場感と戦略を融合させた計画が「経営」を動かす

  • 商品別販売計画は、売上計画ではなく粗利益計画であるべき
  • 主力商品群に絞り、現事業・新事業を現実的に評価する。
  • 計画の最大の山場は、目標加工高と現実のギャップをどう埋めるか。
  • 裏付けのある施策がなければ、計画は単なる希望的観測に終わる。
  • 社長が市場を把握し、戦略的に数字を組み立てることが成功の鍵。

商品別販売計画は、「社長の現場理解」と「利益目標」の交点に立つ最も重要な実務です。ここでの一つひとつの判断と行動が、企業の実利と未来を左右します。この本質を見失わず、強い意志と現実感覚をもって臨むことが求められます。

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