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部門別に割り振った必要経常利益から利益計画を作成する

――目標数字を「実行可能な経営計画」に落とし込む方法

前回までに、会社全体の目標経常利益を設定し、各事業(または部門)ごとにその利益を構想的に割り振るフェーズを整理しました。

本記事では、その割り振った利益目標をさらに具体的な「利益計画」として落とし込み、実行可能なレベルにまでブレイクダウンするプロセスを解説します。


目次

1. 利益計画とは「未来の利益をつくる設計図」

単に目標数値を掲げるだけではなく、どのような費用構造で、どのくらいの売上と利益を出すかをシミュレーションし、行動につなげることが利益計画の目的です。

計画に必要なのは、「利益=売上-費用」の構造を部門単位で分解することです。


2. 利益計画に必要な主要指標

以下の要素を整理することで、部門ごとの利益計画を組み立てられます。

▸ ① 経常利益率(営業利益に近い概念)

経常利益率(= 経常利益 ÷ 売上高)を想定し、その数値から必要売上や費用構造を逆算します。

例:目標経常利益1,000万円、利益率10% ⇒ 必要売上1億円


▸ ② 人件費(変動費/固定費の核)

  • 役員報酬
  • 正社員・パート等の給与
  • 法定福利費(社会保険、労災、雇用保険)
  • 福利厚生費(交通費、食事補助、慶弔費 など)

必要人員をベースに、年間人件費を算出します。ここが多くの事業で最も重い固定費項目です。


▸ ③ 必要人員(組織設計と連動)

利益を出すには「誰が・何人で・どう動くか」を設計する必要があります。

  • 1人あたりの生産性(売上、利益)を想定
  • 必要なリーダー層・実働層の構成を明確化
  • 外注 or 内製の切り分け

例:年間5,000万円売上を出すには月400万円、社員2人必要…など


▸ ④ 未来費用(投資的支出)

将来の収益を生むために、今かける費用が未来費用です。

  • 広告宣伝費(Web、紙媒体、SNS、イベント出展)
  • 教育研修費(社内研修、外部講師、資格取得支援)
  • システム投資(業務効率化、マーケ支援、DX化)

見落としがちですが、ここへの投資を惜しむと長期成長が止まります。むしろ意識的に“未来の種まき”を費目として確保すべきです。


▸ ⑤ 一般経費(日常運営コスト)

日々の事業活動に欠かせない、いわば「空気のようなコスト」です。

  • 旅費交通費(営業、出張)
  • 通信費(ネット、電話)
  • 事務消耗品費
  • 水道光熱費(店舗・事務所)

これらの経費は固定費に近い性質があるため、事業規模と相関しないことも多く、計画上は「定額計上」「前年度踏襲」がベースになります。


▸ ⑥ 減価償却費(固定資産の償却)

設備や建物、車両などの長期資産の費用化です。

  • 製造業・小売業などは設備導入計画と連動
  • 減価償却費を正しく見込むことで資金繰りが安定
  • 「キャッシュは出ないが会計上の費用になる」点に注意

例:500万円の設備を5年で償却 ⇒ 年間100万円を費用計上


3. 部門別の利益計画表をつくる

上記をもとに、各事業部または部門ごとに以下のような利益計画表を作成します。

項目事業1事業2事業3
目標経常利益額10,000千円5,000千円3,000千円
経常利益率(目標)10%15%8%
必要売上100,000千円33,333千円37,500千円
必要人員(人)5人3人2人
人件費(総額)30,000千円18,000千円12,000千円
未来費用(広告・教育)5,000千円3,000千円2,000千円
一般経費8,000千円5,000千円4,000千円
減価償却費2,000千円1,000千円500千円
備考販売増計画あり新規展開予定外注比率高め

※単位はすべて「千円」


4. 予算と実績の「比較サイクル」をつくる

作成した利益計画は、一度作って終わりではありません。

  • 月次・四半期で予実比較を行う
  • 人員増減や販促投資に応じて微修正を行う
  • 計画 vs 実行 vs 結果のPDCAサイクルを運用する

これによって、数字が単なる目標でなく、「現場を動かすエンジン」として機能します。


まとめ:利益計画は、利益をつくる“設計図”である

  • 目標経常利益を達成するためには、費用構造を具体化した計画が必要
  • 経常利益率・人件費・未来費用・一般経費・減価償却費などを部門単位で整理
  • 利益計画表を作成し、数字と人の動きをつなげる
  • PDCAをまわし、利益目標を「管理可能な現実」に変えていく

利益は「願うもの」ではなく、「設計するもの」です。事業部門ごとの数字を構造的に組み立てていくことで、“描いた未来”が具体的なアクションへと変わります。


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