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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章 第72偈)
「もしもバラモンが自分のつとめに関して彼岸に達した(=完全になった)ときには、真理を観ずるかれにとって、かれの束縛の絆はすべて消滅するであろう。」
―『ダンマパダ』第33章 第72偈
🔍 逐語訳・用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
バラモン | 出家修行者としての完成者。真理を実現した者。 |
つとめ(業分) | 各人に課された義務、特に修行・実践・自己完成の努力。 |
彼岸(パーラ) | 生死と煩悩を超えた悟りの境地(ニルヴァーナ)。 |
真理を観ずる | 諸行無常・縁起・無我を深く洞察する智慧。 |
束縛の絆(サンヨージャナ) | 生死輪廻に縛る諸々の執着・欲望・無知などの精神的束縛。 |
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
もし、あるバラモンが、自らの実践を通して「彼岸=悟りの境地」に達したならば、
その人は世界の真理を直観する智慧を得て、
自我・欲望・怒り・執着といった「心を縛るすべての絆」から、
完全に解き放たれるであろう――
この偈はその完成の姿を静かに語っている。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、「自己の務め」を果たすことによって、「束縛を断ち切る力」を得る道筋を示しています。
バラモンとは生まれによらず、実践によって完成される存在であり、
彼岸(悟り)へ至った者は、心を縛るものに一切とらわれません。
これは現代においても「自由な精神」の象徴と言えます。
自分のなすべきことを果たし、真理を見定めた者は、
他人の評価や感情の波に左右されない「安定した自分」を持ち得るのです。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 現代的応用 |
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精神的な独立性 | 他人の期待や不安、業績への過剰な執着を脱し、自分の信じる原則に基づいて判断・行動する。 |
自律したリーダーシップ | 他律的な動機(報酬・名声)ではなく、内的な納得や使命感に基づいて働く人は、周囲を導く力を持つ。 |
心のメンテナンス | 不安・嫉妬・怒りといった束縛を日々手放す習慣は、職場でも長期的に安定した成果と信頼につながる。 |
完成とは“自由”の獲得 | 成長や成功は、何かを得ること以上に「とらわれから自由になること」であるという逆説的な気づき。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「真理を観ずる者は、もはや何ものにも縛られない」
自らの道を歩みきったとき、
人は、誰かと比べることも、何かにしがみつくこともなくなる。見えない絆――
「こうでなければ」「こうあるべき」という執着を断ち切る者こそ、
本当に自由な人間である。自分の務めを果たすことこそが、
もっとも確実な“解放”への道なのである。
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