目次
📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第57偈)
形が無く、堅牢でなく、見ることのできない心を
つねに制御して、はっきりと知って、
つねに念いをこめて歩み、束縛の絆を滅したブッダたち、かれらは世間においてバラモンなのである。
🔍 逐語訳(意訳)
- 形も実体もなく、目に見えず、すぐに流される「心」――
- それをつねに制御し、明晰に観察し、注意深く行動し、
- すべての束縛(煩悩)を断ち切った目覚めた者たち(ブッダ)は、
- この世において〈真のバラモン〉と呼ばれるにふさわしい。
🧘♂️ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
形が無く | 「心」は物質的な形を持たず、五感で捉えられない。 |
堅牢でなく | 心は変化しやすく、一定の形を保たない。 |
はっきりと知る(明知) | 心の動きを観察し、自己認識(内観)を深めること。 |
念いをこめて歩む(念) | 「サティ(念)」=今ここに注意を集中する修行。 |
束縛の絆(サンヨージャナ) | 煩悩や執着によって生起する再生への束縛。 |
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
目に見えず、変化しやすく、掴むことのできない「心」。
それを常に見張り、明晰に認識し、意識的に行動し続け、
ついに執着の鎖を断ち切った者こそ――
この世において真に尊ばれる〈バラモン〉なのである。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、**「心こそが人間のすべての行動の源である」**という仏教の中核思想を簡潔に表現しています。
見えないもの(=心)を制御できる人が、見える世界を本当に導ける――そのような逆説的な智慧が込められています。
つまり、「外の勝利」ではなく「内の勝利」こそが、人格の完成であるという教えです。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
セルフマネジメント | 不安・怒り・焦りなど、自分の「心の動き」に気づき、流されずに制御できる人は信頼される。 |
集中力と注意管理 | 常に「今ここ」に集中し、感情に流されず意思決定する力=リーダーシップの本質。 |
自己内省と成長 | 外的な結果よりも、内的な心の制御と自己理解が長期的成果をもたらす。 |
内発的動機の強化 | 他人の評価や刺激に左右されず、自らの価値観に基づいて行動する力。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「見えない心を制する者が、見える世界を導く」
心に形はない。
それは柔らかく、変わりやすく、
ときに私たちを惑わせる。だが、見張ることができる。
知ることができる。
制することができる。それができたとき、
世界はすでに変わっている。その人こそが、真に高貴な「バラモン」なのだ。
この第57偈は、仏教における「心の制御」=ヴィパッサナー実践の核心を要約したものともいえます。
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