目次
📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第51偈)
一切に打ち勝ち、
迷いの生存を超え、
激流を渡り、
煩悩の汚れがなく、
彼岸に達して、
とらわれの無い人、かれをわれは〈バラモン〉と呼ぶ。
🔍 逐語訳(意訳)
- あらゆる欲・怒り・無明などの内的敵に打ち勝ち、
- 輪廻という迷いの生存を完全に超え、
- 人生という激流を渡り切り、
- 一切の煩悩(汚れ)を洗い流し、
- 涅槃という「彼岸」に達し、
- いかなるものにも執着しない――
そのような人こそ〈真のバラモン〉である。
🧘♂️ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
一切に打ち勝ち(勝者) | 煩悩・執着・誤解・無明など、あらゆる内的障害に克った人。 |
迷いの生存(サンサーラ) | 輪廻とも呼ばれる、苦しみに満ちた生と死の繰り返し。 |
激流(オーガ) | 欲望・執着・生存欲などがもたらす流れに呑まれる危険性の象徴。 |
彼岸(パーラ) | 涅槃、つまり生死・苦の向こう側。最終的な安らぎと解放の境地。 |
とらわれの無い人 | 所有・関係・自己概念すら超越し、何ものにも縛られない状態。 |
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
すべての煩悩と戦い、これを乗り越えて、
生死という苦の循環を断ち切り、
迷いという激流を渡り切った者。
心の汚れは消え、彼岸に至り、
もはや何ものにも執着することのない――
そのような覚者こそ、真の〈バラモン〉である。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、人間の精神的な「到達の理想像」を明確に示します。
ただ善良であるとか、静かであるだけではなく、闘い・苦悩・試練を経て、なお清くある人。
それは、現実の困難や煩悩に真剣に向き合い、乗り越えた末にたどり着く「本物の自由」です。
現代社会においても、外側の成功より、内側での勝利が問われる時代になっています。
自らの欲望や不安、自己正当化といった「内なる敵」に勝ち、自由に生きること――
この姿勢が、現代の〈バラモン〉の姿です。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
精神的セルフマスタリー | プレッシャー、恐怖、過去の失敗といった「内なる激流」を乗り越える力。 |
長期的視野と落ち着き | 目先の損得や波風に揺れず、落ち着いて本質的行動をとれるリーダー像。 |
執着からの解放 | 評価、役職、名誉への執着を離れ、「なすべきことを成す」姿勢に徹する。 |
バランスのとれた到達 | 成果、人格、精神性が統合された「完成された人間」としての信頼感。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「欲と恐れを越え、心の激流を渡る者」
生と死の流れを越えて、
迷いを脱し、清らかに立つ。勝利は外にあるのではなく、
内なる束縛を解き放ったその先にある。そこにこそ、本当の自由と力が宿る。
この偈は、自己の完成、そして内なる勝利に関する最高の象徴句のひとつです。
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