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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第24偈)
彼岸(パーラ)にも、
此岸(イーマム)にも属さず、
「彼岸」「此岸」という区別をも超えており、
一切の事象(ダンマ)を超えたところにいる者――私はその人を〈バラモン〉と呼ぶ。
――『ダンマパダ』第33章 第24偈
🔍 逐語訳(意訳)
彼岸――すなわち涅槃という到達点にも、
此岸――煩悩と執着の世界にも属していない。
「彼岸」や「此岸」といった分別や概念自体を超越し、
ありとあらゆる法(現象・条件づけ)を超えた場所にいる者――
そのような人こそ、仏陀が称える〈バラモン〉である。
🧘♂️ 用語解説
- 彼岸(パーラ):仏教で解脱・涅槃・悟りの世界。目指すべき理想の境地。
- 此岸(イーマム):私たちが生きる「迷いと執着に満ちた世界」。
- 彼岸・此岸なるものもなく:二元対立すら超えた「空」の境地。
- あらゆる事象(ダンマ):物理的・心理的・観念的すべての存在と現象。
- 事象のかなたにある人:概念や執着・存在の枠組みすら超えた自由な存在。
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
涅槃という「目的地」にもとどまらず、
この世界という「出発地」にもとどまらない。
そもそも、「行く・来る」「悟り・迷い」という二元の見方を超えており、
あらゆる存在や概念・現象の束縛を超越している――
そのような人こそ、仏陀の説く真の〈バラモン〉である。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、仏教の核心概念である「非二元性(advaya)」を明確に示しています。
多くの人は「迷い(此岸)」から「悟り(彼岸)」へと到達することを目的とします。
しかし、仏陀はその到達目標すら手放すこと――「そこにさえ執着しない境地」こそが、真の自由であると説いています。
この境地は「一切の制限・定義・分別・達成欲を手放した精神的自由」であり、ビジネスや日常生活にも極めて深い示唆を与えます。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
目的にとらわれない自由な実践 | 数字目標や成功にとらわれすぎると本質を見失う。目的の手前で「今、この行為そのものに価値を見出す」姿勢が重要。 |
二元的思考の超越 | 成功/失敗、上/下、勝ち/負けという二元論から離れ、プロセス全体を受け止める視点が創造的判断を生む。 |
既存枠組みの超克 | 常識や制度、評価の枠組みを超えて物事を捉える人は、イノベーションと本質的価値創造の源泉になる。 |
真の自由と内面的安定 | 目標達成や承認欲求すら手放すことで、自己の軸が強まり、環境に左右されない安定感を持てる。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「悟りすら捨てて、自由に生きる者こそ、真に悟った者である」
彼岸を目指すことすら執着となり得る。
此岸にとどまることも束縛となる。
二つを超えて、分別も、願望も、境界も超えたところに、
本当の自由と静けさがある。
仏陀は、そうした人を「バラモン」と呼び、最も高く評価したのです。
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