目次
📜引用原文(日本語訳)
第七七偈
内心には想念をすっかり払いのけて退けた修行僧は、こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
—『ダンマパダ』 第二章 第七七偈
🔍逐語訳と用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
想念(saññā) | 感覚によって起こる心の表象・思考・概念。過去の記憶、期待、評価、判断など。 |
すっかり払いのける(pajahati) | 完全に手放し、意識から一掃すること。執着をなくす行為。 |
こなたの岸 | この世、苦悩と迷妄の生存の世界。 |
脱皮 | 自己の古い層(習慣・煩悩・自己概念)を脱ぎ捨てて、新たな在り方に生まれ変わる象徴。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
修行僧は、
心の中に渦巻く思念――
「こうあるべきだ」「過去にこうだった」「未来はどうなる」――
そうした内的なおしゃべりを、すべて静める。
想念を手放し、
ただあるがままに「今」にとどまるとき、
彼は執着と迷妄から自由になる。
それはまるで、蛇が古い皮を脱ぎ捨てるように、
自我と記憶の層を捨て、彼岸(ニルヴァーナ)に至る道を歩む姿である。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、「想念」=頭の中の囁き・解釈・雑念を静めることの意義を説いています。
人は「現実そのもの」よりも、「現実に対する思い込み」や「自分語り」によって苦しみます。
たとえば:
- 「あの人にどう思われているだろう」
- 「自分はまだ不十分だ」
- 「こんなことを言ったらダメだろう」
といった思念が、現実以上に人の心を縛っているのです。
この偈が示す修行とは、そうした内的独白・自我のストーリーを静かに終えること。
静けさの中にこそ、本来の自由があると説いています。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と実践 |
---|---|
内省とメンタルヘルス | 頭の中の「思考のループ(想念)」を放っておくと、疲弊や燃え尽きの原因に。マインドフルネスやジャーナリングで可視化し、手放すことが重要。 |
意思決定の明晰さ | 判断の多くは「過去の経験」や「他者からの評価」に基づいて曇っている。想念を静め、事実ベースの判断力を養おう。 |
創造性の回復 | 想念のノイズが少ないとき、創造性は自然に湧き上がる。瞑想的時間や“ぼーっとする時間”の中に創造の芽が潜む。 |
リーダーシップ | リーダーが「不安や迷い」の想念にとらわれると、チームにも不安が波及する。沈黙を恐れず、静かな自信で場を保てる力が必要。 |
✅心得まとめ
「想念を沈める者は、もっとも静かな力を得る」
思考しすぎる現代人に必要なのは、
もっと多くの“無言の時間”である。
何も判断せず、
何も比較せず、
ただ「今ここ」にとどまるとき、
その人の中に本質の智慧が現れる。
それは決して声高ではない。
だが、もっとも深く確かな力である。
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