目次
📜引用原文(日本語訳)
第七五偈
諸の欲望の対象をすべて捨てて、
欲望に関する絆をすべて断ち切って、
修行僧は、こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
—『ダンマパダ』 第二章 第七五偈
🔍逐語訳と解釈
- 諸の欲望の対象:目・耳・舌・身体・心などが引きつけられる感覚的快楽のこと(色・声・香・味・触・法)。
- 欲望に関する絆:欲望にとらわれることによって生まれる執着、依存、支配欲。
- こなたの岸:輪廻と苦悩の世界。煩悩に満ちたこの世的な在り方。
- 蛇の脱皮:古い束縛や自我を脱ぎ捨て、新たな次元の生を生きる象徴。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
欲望の対象 | 感官を通して得られるあらゆる快楽(見るもの、聞くもの、食べるものなど) |
絆(きずな) | サンスクリット語「サンヨージャナ(saṃyojana)」=束縛。人を輪廻に縛る10種の煩悩のうちの1つが「欲愛」 |
こなたの岸 | 私たちが通常生きている迷いと苦しみに満ちた世界 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
修行僧は、
目に見える楽しみや、心をとらえる魅力的なものをすべて捨て、
それらに対して「欲しい」「もっと」と思う心のしがらみも断ち切る。
そうして彼は、
この世の執着から解き放たれ、
まるで蛇が脱皮するように、
古い自分を置き去りにして、彼岸へと渡る。
🧠解釈と現代的意義
この偈文は、「欲望の対象を捨てよ」と語っていますが、
それは快楽や楽しみを否定するというよりも、
それに縛られている状態からの自由を目指す教えです。
現代社会では、
- 情報やモノの洪水
- 広告による刺激
- SNSによる比較欲
などが、知らず知らずのうちに私たちを「欲望の絆」で縛っています。
この偈は、それらの刺激から一歩引いて、
**「本当に必要なものとは何か」**を見極めよと呼びかけています。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
マーケティングと倫理 | 「欲を刺激して売る」のではなく、「真に顧客の役に立つ価値」を提供する姿勢こそが信頼と持続可能性を生む。 |
働き方の選択 | 給与や名誉などの「外的報酬」に執着するあまり、自分の価値観を失わないように。 |
キャリア形成 | 周囲との比較やステータス争いに囚われず、「何のために働くのか」を明確に保ち、無駄な欲望に振り回されない生き方を貫く。 |
経営判断 | 欲望にまみれた拡大路線ではなく、必要な資源に集中し、過剰な投資・過剰な期待を切り捨てる勇気が経営の質を高める。 |
✅心得まとめ
「欲の絆を断てば、心は空をゆく」
欲望は成長の動機ともなるが、
制御されずに放置すれば、
人は容易に自我と執着に囚われていく。
本当の自由とは、
「欲しいものを手に入れたとき」ではなく、
「欲しくてたまらなかったものを、
もう必要としないと悟ったとき」に訪れる。
それは、執着を手放した蛇のように、
軽やかで、しなやかな生き方への入口となる。
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