目次
📜引用原文(日本語訳)
第七〇偈
大きな激流が極めて弱い葦の堤を壊すように、
迷妄をすっかり断ち切ってしまった修行僧は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
—『ダンマパダ』第二章 第七〇偈
🔍逐語訳と意図
- 「大きな激流」:人生における変化の波、感情や思考の奔流。
- 「葦の堤」:迷妄に覆われた不安定な認識。脆い精神状態。
- 「迷妄(無明)」:真理を知らず、執着や苦しみに無自覚な状態。
- 「こなたの岸」:俗世。執着や輪廻に縛られた未解脱の存在。
- 「蛇の脱皮」:古い自己認識・無知を捨て、清らかな新たな存在に至る象徴。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
迷妄(無明/アヴィッジャー) | 真理に対する無知。苦しみの根源とされ、煩悩の最たるもの。 |
岸を捨てる | 輪廻の世界を離れ、悟りやニルヴァーナに至る象徴表現。 |
修行僧(比丘) | 戒律と智慧により煩悩を滅しようとする実践者。 |
脱皮 | 古い執着・迷妄の殻を捨て、覚醒へ至る象徴。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
私たちが抱える「迷い」は、ただの錯覚ではなく、
物事をありのままに見ることを妨げる根深い“無知”です。
この偈は、その「迷妄」を徹底的に断ち切ることで、
修行僧は俗世(=こなたの岸)を離れ、
古い皮を脱ぐように、新たな目覚めに至ると説いています。
真理を知らぬ心は、激流の前の葦の堤のように脆く、
悟りを得た智慧の心は、それを超えてゆく。
🧠解釈と現代的意義
現代において「迷妄」とは何か?
それは、
- 偏見や先入観で物事を見ること
- 過去の経験に縛られて真実を見失うこと
- 他人や自分に対する無自覚な誤解を抱え続けること
など、私たちが知らず知らずのうちに陥っている「心の盲点」です。
この偈は、「思い込み」「こだわり」「正しさへの執着」を手放したとき、
本当の解放がやってくるという智慧を示しています。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
意思決定 | 経験則だけに頼るのではなく、事実や他者の視点を受け入れる柔軟性が必要。 |
チームマネジメント | 「部下はこうだ」「顧客はこうだ」という固定観念を捨て、傾聴することで真の課題に気づける。 |
戦略転換 | 思い込みに囚われず、時に「これはもう役に立たない」と判断して方針を捨てる勇気が重要。 |
成長と学び | 常に「自分は知らないかもしれない」という姿勢で臨む人ほど、成長の速度は速い。 |
✅心得まとめ
「真実は、古い思い込みを脱いだその先にある」
迷いの根源は「知らないことを知らない」こと。
怒りや執着の前に、まず「無明」がある。
それに気づいたとき、人生は変わり始める。
真理を知るとは、
新しい視点を得ること、
古い自分を捨てること。
まるで蛇が皮を脱ぐように――。
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