目次
📜引用原文(日本語訳)
第六十八偈
大きな激流が極めて弱い葦の堤を壊すように、
情欲をすっかり断ち切ってしまった修行僧は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
― 『ダンマパダ』 第二章 第六十八偈
🔍逐語訳と意図
- 「大きな激流」:人間の内部に生起する欲望の衝動。心を飲みこむ力を持つ。
- 「弱い葦の堤」:制御の効かない、表面的で脆弱な自制心。習慣や惰性。
- 「情欲をすっかり断ち切った修行僧」:欲望を根源から断ち切った実践者。心が自由で安らかである。
- 「蛇の脱皮」:古い自己の殻、束縛、習慣からの解放の象徴。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
情欲(カーマ) | 感覚的な欲望、快楽への執着。仏教五欲(色・声・香・味・触)の中心的毒。 |
こなたの岸 | この世、生死輪廻(サンサーラ)の側。迷いや煩悩のある世界。 |
蛇の脱皮 | 古い自己や煩悩から解放され、新しい段階へ進む比喩。精神的再誕ともいえる。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
欲望の流れは、意志の弱い心を簡単に押し流してしまう。
その衝動を抑え込もうとしても、
葦のような柔らかな堤では、いずれ決壊する。
しかし、修行僧は、欲望そのものを根から断ち切る。
そうして、迷いの岸を去り、
蛇が古い皮を捨てるように、自由な存在となる。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、**「欲望の力は、自覚なしには制御不能だ」**という警告とともに、
欲望に勝つことこそが本当の自由であるという道を示しています。
多くの人が「欲望をコントロールする」「適度に付き合う」と言うが、
実際には飲み込まれ、心は揺れ、迷いが生じる。
この偈は、表面的な堤(ルールや節制)ではなく、
**根本的な気づきと断念(断ち切ること)**が必要だと説きます。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
誘惑への対処 | 甘い誘惑(過度な利益、快楽、楽な道)に表面的な自制では太刀打ちできない。根本の価値観を正さなければならない。 |
意思決定 | 感情や欲望に基づく判断ではなく、「何が本当に必要か」を見極めた選択が重要。 |
倫理的リーダーシップ | 利己的な願望を抑えるだけでなく、利他のために意識の次元を変える覚悟が必要。 |
自己認識の深化 | 「何に惹かれ、何に執着しているか」を明確にすることが、心の自由を得る第一歩。 |
✅心得まとめ
「欲望に打ち勝つことは、自己を再創造することである。」
激流に堤を築くのではなく、
そもそも流れに足を踏み入れない覚悟が大切だ。
表面的な抑制ではなく、
「欲しい」という心の動きを観察し、
それが虚しい幻想だと気づいたとき――
あなたは、真に自由な存在へと生まれ変わる。
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