目次
📜引用原文(日本語訳)
第五十七偈
池に生える華をば、水にもぐって折り取るように、
すっかり憎しみを断ってしまった人は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が古い皮を脱皮して捨て去るようなものである。
― 『ダンマパダ』 第二章 第五十七偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 池に生える華をば、水にもぐって折り取るように:
内なる憎しみの根源にまで意識を向け、深く見つめ、手放す修行の姿勢を象徴。 - すっかり憎しみを断ってしまった人は:
怒り・恨み・敵意などの感情を根本から絶った者。 - こなたの岸を捨て去る:
この世の執着・感情・煩悩を脱し、悟りの岸へと渡っていく。 - 蛇が古い皮を脱皮して捨て去るようなもの:
過去の自己を静かに脱ぎ捨て、新たな清らかさに生まれ変わる様。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
憎しみ(ドーサ) | 三毒の一つ。怒り・嫉妬・敵意などの感情の源で、心を曇らせる最大の障害。 |
池に生える華 | 執着や煩悩の美しさの象徴。 |
水にもぐって折り取る | 意志ある修行によって、深い煩悩を見つめ、処理する象徴的な行動。 |
蛇の脱皮 | 変化、成長、そして執着の手放しの比喩。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
修行者は、
池に咲く華を手折るように、
深い心の中に潜んでいた憎しみを、
静かに、だが確実に断ち切る。
そうして彼は、もはやこの世への執着を捨て去り、
古い自己を脱ぎ捨てるように、
軽やかに、清らかな境地へと歩みを進めていく。
🧠解釈と現代的意義
怒りや憎しみは、外に向かって放たれると同時に、
もっとも深く自分自身を傷つける毒です。
この偈は、そうした「内なる炎」を鎮めることの尊さを説いています。
しかも、それは表面的な我慢ではなく、心の奥底からの断捨離であると。
- 怒りを沈めることで、人は静かに進化する。
- 誰かを許すことは、最終的に自分を許すことにもつながる。
「断つべきは相手ではなく、自分の中の憎しみ」
それがこの偈に込められた、仏教的かつ普遍的な真理です。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
感情マネジメント | 怒りに任せた判断は、組織の信頼と秩序を崩す。怒りを自覚し、沈めることがリーダーシップの要。 |
対人関係の改善 | 衝突があっても、まず憎しみを断ち、自他の尊厳を守る姿勢が大切。 |
自己変革 | 改革・成長のためには、過去の怒りや恨みに執着せず、新しい自己に移行する「脱皮」が必要。 |
危機対応力 | 苛立ちの中でも沈黙できる人は、嵐の中でも航海できる指揮者となれる。 |
✅心得まとめ
「怒りを摘み、静かに進め」
心に咲いた怒りの華を、そっと折り取りなさい。
深く沈んで、それを見つめ、手放すのです。そうすればあなたは、
古い皮を脱ぎ捨てた蛇のように、
自由に、穏やかに、前へ進める。
この偈は、対人関係のストレスや自己否定感に悩む現代人にとっても、大きな示唆を与えます。
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