目次
📜引用原文(日本語訳)
第五十一偈
泥沼をわたりおわって、村の刺を粉砕し、
慢心を滅ぼすに至った人、
かれこそ〈修行僧〉と呼ばれるのである。
― 『ダンマパダ』 第二章 第五十一偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 泥沼をわたりおわって:執着や煩悩にまみれた苦の世界(サンサーラ)を超えて清らかな境地に至った者。
- 村の刺を粉砕し:五感の刺激や外界の誘惑を克服した者。
- 慢心を滅ぼすに至った人:「自分は他者より優れている」という思い上がり、傲慢さを完全に消し去った人。
- かれこそ修行僧と呼ばれるのである:外面的な修行ではなく、内なる心の浄化を成し遂げた者こそが真の修行者である。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
泥沼(サンサーラ) | 輪廻・迷いの生存。苦しみの源となる煩悩に満ちた現世。 |
村の刺 | 感覚器官を通じて心を乱す刺激。五欲(色・声・香・味・触)など。 |
慢心(マーナ) | 他者より優れていると思う驕り。三毒に属する執着の一形態。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
人生という煩悩の泥沼を乗り越え、
五感の刺激や欲望に屈せず、
さらに、自らの優越を誇る心=慢心までも打ち砕いた者こそが、
真の修行者と呼ばれるにふさわしい存在である。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、精神修行の完成には「謙虚さの極致」が必要であることを説いています。
知識や成功が積み重なるほど、
人は知らず知らずのうちに優越感にとらわれやすくなります。
「自分は分かっている」「自分の方が優れている」と思った瞬間、
そこに慢心が芽生え、成長が止まるのです。
慢心を滅ぼすとは、
- 批判されても怒らず、耳を傾ける強さ
- 成果を誇示せず、黙々と善を積む姿勢
- 他者と比べず、己を省みる静かなまなざし
を身につけることです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
リーダーの姿勢 | 地位や成果におごらず、チームの声に謙虚に耳を傾ける姿勢が信頼を生む。 |
学習する文化 | 「自分は十分知っている」という思い込みを排し、常に学び続ける組織風土を育てる。 |
競争社会での安定 | 他者と比べて優越を感じるのではなく、自分の使命と誠実さを基準にする。 |
評価と自己認識 | 評価や賞賛に頼らず、自らの内面で達成感や満足を得られる状態をつくる。 |
✅心得まとめ
「謙虚さは、最も深い智慧である。」
慢心を滅ぼすとは、
自己を低く見積もることではない。
比べることなく、
誰とも競わず、
静かに磨かれた心で生きることである。
次の偈(第五十二偈)も同じ構造で「欲望の滅尽」について語られます。
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