目次
📜引用原文(日本語訳)
第四六偈
生存に対する妄執を断ち切り、
実体についての固執を断ち切った修行僧にとっては、
生れをくり返す輪が滅びている。
この人は悪魔の絆から解き放たれている。
― 『ダンマパダ』 第二章 第四六偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 生存に対する妄執を断ち切り:生き延びたい、存在したいという根本的な欲求(有愛)を、意志によって明確に切り離した。
- 実体についての固執を断ち切った修行僧にとっては:「我(あれ)」という固定的な自己存在への錯覚を見破り、それへのとらわれを完全に消し去った修行者にとっては、
- 生れをくり返す輪が滅びている:輪廻の原因が消滅したため、再生のサイクルが断ち切られている。
- この人は悪魔の絆から解き放たれている:煩悩・欲望・無明といった苦の源泉から完全に自由になっている。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
妄執(もうしゅう) | 実在しないものにしがみつくこと。特に「生きたい」「欲しい」「守りたい」といった執着。 |
我執(がしゅう) | 「これが私」という思い込み。自己同一性への執着。 |
輪廻(サンサーラ) | 無明と欲望によって支配される、生死と苦しみの反復サイクル。 |
悪魔の絆(マーラの縛り) | 解脱を妨げる煩悩、恐れ、怒り、欲などの内的束縛。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
生きることにしがみつく心と、
「私はこういう人間だ」という思い込みを断ち切った修行僧は、
もはや生と死を繰り返すことはない。
彼は、煩悩や恐れという「悪魔の絆」から完全に自由であり、
真の安らぎ(ニルヴァーナ)に至った存在である。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、「断ち切る(ヴィチンディタ)」という積極的な行為に焦点を当てています。
人は、慣れた苦しみにしがみつき、
「それがなくなったら自分ではなくなる」と恐れ、
変化を拒みます。
しかし、この偈はこう語ります。
「それを断たないかぎり、
あなたは何度でも同じ迷いを繰り返す。」
現代における「生存への妄執」とは、
評価、立場、収入、安全欲、あるいは過去の自分像など。
それにしがみついている限り、人は本当の意味で自由ではありません。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
立場・役割へのしがみつきの断捨離 | 「このポジションでなければ意味がない」という発想を捨てると、より柔軟で創造的な行動が可能になる。 |
変化に対する抵抗の克服 | 過去の成功体験や現在の安定に執着しすぎると、新しい挑戦を拒絶することになる。妄執を断てば飛躍がある。 |
エゴによる人間関係の摩耗からの脱出 | 「自分が正しい」という前提を外すことで、対話が再び成立する。 |
心の独立性と持続的リーダーシップ | 結果や外部評価から自由になることで、リーダーは静かにブレずに判断し続けることができる。 |
✅心得まとめ
「断ち切らなければ、同じ苦しみが続く。
断ち切れば、新しい光が射す。」
自由とは、与えられるものではなく、
自ら選び取り、手放し、切り離す勇気によって得られるものである。
この偈が教えてくれるのは、
悟りとは「受け身の変化」ではなく「能動的な断念」だということです。
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