目次
📜引用原文(日本語訳)
第四五偈
生存に対する妄執を滅ぼし、
実体についての固執を断ち切った修行僧にとっては、
生れをくり返す輪が滅びている。
今や迷いの生存を再び繰り返すことはない。
― 『ダンマパダ』 第二章 第四五偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 生存に対する妄執を滅ぼし:生き続けたい・存在したいという本能的な執着(生存欲)を完全に消滅させ、
- 実体についての固執を断ち切った修行僧にとっては:「私」「我」といった永続的な実在があるという妄想(我執)を断ち切った修行者にとっては、
- 生れをくり返す輪が滅びている:輪廻の原因となる無明と渇愛が断たれ、もはや再生の連鎖は存在しない。
- 今や迷いの生存を再び繰り返すことはない:もはやこの者は、無明によって惑い、苦しみの中で再び生きることはない。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
妄執(もうしゅう) | 根拠のないとらわれ。特に「存在したい」「これが自分だ」と信じること。 |
実体への固執 | 「自己」という固定された存在があるという思い込み(=我執)。 |
輪廻の輪(サンサーラ) | 煩悩と無明によって支えられた苦しみの連続。 |
迷いの生存(有) | 欲・怒・愚かさなどに支配された、生存への執着がある生き方。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
「もっとこうありたい」「生き延びたい」という深層の執着、
そして「これが自分である」という思い込みを捨て去った修行僧は、
もはや生と死を繰り返す輪廻に巻き込まれることはない。
彼は真理を見極め、迷いの世界を完全に離脱した存在である。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、仏教の核心——解脱の完成を描いています。
繰り返される言葉に込められているのは、「同じ苦しみを繰り返さない人になる」という明確な目標です。
現代に生きる私たちは、輪廻のように同じ悩み、同じ衝動、同じ後悔を何度も繰り返してしまいがちです。
この偈は、それらから本当に抜け出すには、「生存への執着」と「自己への幻想」を見つめ、断ち切ることが必要だと教えます。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
ループ思考からの脱出 | 「また同じ失敗をした」「また同じ人間関係のもつれに陥った」という思考・感情のループから抜け出す。 |
「成功しなければならない」思考の手放し | 生存欲や評価欲に根ざした強迫的な目標追求をやめることで、より自由で創造的な発想が生まれる。 |
エゴからの解放によるチーム連携 | 「自分が正しい」という固執を捨てると、より柔軟で信頼に満ちたチームワークが可能になる。 |
成熟した判断力の育成 | 迷いの生存(焦り・恐れ・怒り)を繰り返すのではなく、静かな観察と手放しによる高次の判断へ。 |
✅心得まとめ
「自分はこうでなければ」
「こうあるべき」
その執着を超えたとき、人生は初めて自由になる。
輪廻とは、他人ではなく、自分の中の執着が作り出すものである。
その構造に気づき、手放し、離脱したとき、
人は真の意味で「新しい人生」を生き始める。
この第四五偈は、『ダンマパダ』第二章「修行僧」の終盤にふさわしく、
解脱者の境地を静かに、しかし強く繰り返し描いています。
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