目次
📜引用原文(日本語訳)
第四三偈
心が煩悩に汚れていないで、
実体についての固執を絶ち切った修行僧にとっては、
生れをくり返す輪が滅びている。
今や迷いの生存を再び繰り返すことはない。
― 『ダンマパダ』 第二章 第四三偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 心が煩悩に汚れていないで:心に欲望・怒り・妄想などの汚れが一切残っていない状態であり、
- 実体についての固執を絶ち切った修行僧にとっては:「私という確固たる存在がある」という誤解(我執)を完全に手放した者にとっては、
- 生れをくり返す輪が滅びている:輪廻の因果が断たれ、苦しみの連鎖が終息しており、
- 今や迷いの生存を再び繰り返すことはない:この修行者は二度と無明の世界に戻ることはない。真に自由である。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
煩悩に汚れていない | 三毒(貪・瞋・癡)が消滅し、心が完全に清らかである状態。 |
実体への固執 | 「私」や「我」といった不変な実体があるという妄念。我執とも。 |
生れをくり返す輪(サンサーラ) | 輪廻転生を表す苦しみのサイクル。 |
迷いの生存(有) | 煩悩と無明によって支えられた、執着ある生き方。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
欲望や怒りなどの煩悩を清め、
「自分はこういう存在である」というこだわりを捨て去った修行僧は、
もはや輪廻の連鎖に巻き込まれることがない。
彼は、再びこの迷いの世界に生まれ変わることはない。
完全なる解放者である。
🧠解釈と現代的意義
この偈が繰り返し強調するのは、**「心の純化」と「自己観念の解体」**という、仏教の核心にある二大テーマです。
現代の文脈においても、これは極めて実践的な教えになります。
- 我々の苦しみの多くは、
「もっと手に入れたい」「こう見られたい」「こうでなくてはならない」という煩悩と、
「これが私である」という自己イメージへの執着から生まれています。 - そこから自由になると、
**「過去と同じパターンを繰り返す生き方」**が終わります。
それはまさに、“現代的輪廻”からの脱出です。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
負のループの終焉 | 過去の失敗・恐れ・比較などに執着しないことで、新しい判断ができるようになる。 |
役割を超えた生き方 | 肩書や立場に縛られずに生きることで、自由な発想と実行力が生まれる。 |
心の浄化による安定性 | 感情の起伏に支配されない心は、信頼性の高いリーダーシップをもたらす。 |
繰り返さない選択 | 「また同じことをしてしまった」という後悔から、「次は違う選択ができた」という進化へ。 |
✅心得まとめ
「もう繰り返さない」――それが、真の自由であり、悟りである。
同じ迷いに戻らない人は、
他人にも自分にも縛られず、
まったく新しい境地で生きていける。
そしてそれこそが、
仏陀が説いた「再生の終焉=涅槃(ニルヴァーナ)」の意味である。
この第四三偈は、『ダンマパダ』第二章「修行僧」の思想的終止符とも言える節であり、
繰り返される主題によって、読者・実践者に悟りのイメージを深く刻み込みます。
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