目次
📜引用原文(日本語訳)
第三八偈
すべての生存は無常であり、苦しみであり、変滅するものである。
明らかな知慧をもって見る人には、すべてのものは滅び、
何ものをも喜んで受けとることがない。
― 『ダンマパダ』 第二章 第三八偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- すべての生存は無常であり、苦しみであり、変滅するものである:この世にある一切の存在(命・物・関係)は、常に変化し、やがて消え、苦しみを伴う。
- 明らかな知慧をもって見る人には、すべてのものは滅び:真理を見通す智慧ある者には、どんなものも一時的なものであり、永続しないとわかる。
- 何ものをも喜んで受けとることがない:だから、たとえ嬉しいことが訪れても、それに執着して一喜一憂しない。執らわれない。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
無常(アニッチャ) | すべての現象は変化し続け、永続するものは何一つないという仏教の真理。 |
苦(ドゥッカ) | 無常に執着することによって起きる精神的な不満や苦痛。 |
変滅(ヴィナッサ) | すべては最終的に壊れ、消滅していくということ。 |
明らかな知慧(パッニャー) | 執着から自由になった、深い理解の眼。世の真理をあるがままに見通す能力。 |
喜んで受けとることがない | 無常であることを知っているがゆえに、一時の喜びや利益に執着しない態度。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
この世界に存在するものは、すべて移ろい、変わり、やがては消えゆく。
この真理を明らかな智慧でもって観る人は、
喜びも悲しみも、成功も失敗も、すべてが過ぎゆくことを知っている。
ゆえに、何が訪れようともそれに執着せず、
心を穏やかに保つのである。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、「喜びにすら執着しないこと」の大切さを教えています。
一般には「苦しみから離れたい」とは思っても、
「喜びから離れたい」とは思わないものです。
しかし仏教では、「喜びへの執着」こそが、
やがて来る喪失による苦しみの原因となる、と説きます。
たとえば――
- 成功を手放したくない
- 人からの評価に酔う
- 幸福な状態を「永遠に続いてほしい」と思う
こうした欲望が心の中にある限り、
変化は必ず不安や苦痛へと変わるのです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
成功への執着からくる不安の増大 | 高評価や売上が「当たり前」になると、落ちた時の恐怖が倍増する。冷静な自己認識が必要。 |
「勝って兜の緒を締めよ」の智慧 | 一時の成功に浮かれることなく、無常を知ることで冷静な判断力を保てる。 |
変化する組織・市場への対応 | 状況に執着せず「今ここでなすべきこと」に集中できる人材は、柔軟に変化に適応できる。 |
安定志向の罠からの脱却 | 安定や恒常性を理想とするマインドから離れることで、逆境に強い組織文化が育つ。 |
✅心得まとめ
「すべては過ぎゆくもの――だからこそ、執らわれない」
喜びも苦しみも、形あるものも名声も、
すべては無常であり、やがて変わり、消えるもの。
それを知る人は、何が訪れようとも心を乱されず、
静けさの中に生きる。
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