目次
📜 引用原文(『ダンマパダ』第30偈)
人が快楽に耽り、官能にしたがい、
心のままに動くならば、
この世で名誉はいつもかれを捨て去る。
まるで果実の落ちてしまった木を、鳥が飛び去るように。
🪶 逐語訳(意訳)
- 快楽に溺れ、欲望の赴くままに生きる者は、
- 自制を失い、判断を誤り、節度を見失う。
- そのような者のもとからは、
- 名誉や信頼は、果実を失った木から鳥が離れるように去っていく。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
快楽に耽る(kāma-rati) | 五感を通じた官能的な欲望(色・音・香・味・触)に溺れること。 |
心のままに動く(citta-anusārī) | 自分の欲望や衝動に流されるまま、理性や節制なく生きる状態。 |
名誉(yasa) | 社会的な尊敬、信頼、評価などの総称。 |
果実の落ちた木の比喩 | 魅力を失ったものには、価値あるものはとどまらないという象徴的表現。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
もし人が、官能的な快楽に執着し、
欲望のままに生きているならば、
その人は、やがて社会的な信頼や名誉を失っていく。
それはまるで、果実を落としてしまった木に
鳥がとどまらず、去っていくようなものだ。
🔍 解釈と現代的意義
この句は、「快楽そのもの」ではなく、
快楽への執着と制御の欠如が人間を堕落させると説いています。
人間は本能的に快を求めますが、
その本能を「理性」「道徳」「智慧」で整えず、
感情や欲望に身を委ねると、
やがて信頼を失い、価値を失っていくのです。
現代においても、
- 地位ある者のスキャンダル
- 一時の快楽のために台無しにする信用
- 欲望に流された発言や行動による炎上
これらすべては「心のままに動くこと」への警告と言えます。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーの節度 | 快楽や金銭への執着により、判断や統治の正当性が揺らぎ、信頼を失う。 |
信頼資本の管理 | 欲望に流された意思決定は、短期的利益の代償として長期的信頼を失う。 |
自己管理とブランディング | 日々の行動や発言が、自らの名誉と直結していることを自覚すること。 |
働き方と充足 | 快適さを追い求めすぎるあまり、向上心や努力が薄れ、信用を損なう場合もある。 |
💡 心得まとめ(結びのことば)
「快楽は心を慰めるが、節制は人格を築く。」
「果実なき木に鳥はとどまらず――信頼もまた、節度のない者を去っていく。」
私たちは、何を快とするかを選ぶことはできる。
しかし、その快楽に支配されるかどうかは、心の訓練にかかっている。
本当の名誉とは、節制された人格からにじみ出るものであり、
それは短期的な快楽を超えた「静かな光」のように輝くのです。
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