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📜 引用原文(出典:『ダンマパダ』第3章 第13偈)
屋根を粗雑に葺いてある家には雨が洩れ入るように、
心を修養してないならば、迷妄が心に侵入する。
(パーリ語原典:
Asārāṃ bhavitaṃ gehaṃ vuṭṭhī samativijjhati,
Tath’evaṃ abhavitaṃ cittaṃ moho samativijjhati.)
🪶 逐語訳
- 粗雑に葺かれた家には、雨がしのび込み、
- 修養されていない心には、迷い(無知・妄念)が入り込む。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
屋根を粗雑に葺いた家(asārāṃ gehaṃ) | 整備や防備のなされていない心の象徴。 |
雨(vuṭṭhī) | 外から侵入してくる精神的影響(欲望、怒り、無知など)を象徴。 |
修養していない心(abhavitaṃ cittaṃ) | 瞑想や内省などによって鍛えられていない、放任された心。 |
迷妄(moha) | 無明(avidyā)とも。真理が見えない状態。仏教における三毒のひとつで、「迷い・誤解・錯覚」の根源。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
屋根が粗末で手入れされていない家に雨が漏れてくるように、
心の訓練がされていない状態では、迷いや錯覚が簡単に入り込み、
物事を誤って捉えたり、誤った行動を引き起こす。
つまり、無知は放置された心に自然に入り込むのだ。
🔍 解釈と現代的意義
この偈は、**「自覚なき心には無知(迷い)が入り込みやすい」**という非常に現代的な教えです。
人は、何も考えずに日々を過ごしていると、「自分が正しいと思い込んでいる誤り」や「世の中の価値観に飲み込まれた思考」によって、
知らず知らずのうちに自分を縛り、判断を狂わせてしまいます。
特に現代社会は、膨大な情報と他人の意見にさらされており、**「自分の思考だと思っていたものが実は借り物である」という状況が起きやすい。
だからこそ、「心の屋根を整える」こと――すなわち“主体的に考え、観察する力”**が求められるのです。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
意思決定の誤り | 十分な内省や分析がなければ、誤った情報や偏見に基づいた判断をしてしまう。修養された心が冷静な選択を導く。 |
戦略ミスの原因 | 他者の成功例や流行をうのみにして自社に適用すると、失敗に繋がる。思考停止は企業の命取りとなる。 |
自己認識のズレ | 「自分は分かっている」と思っているときほど、実は見えていないことが多い。定期的なフィードバックと内省が重要。 |
組織の思考の硬直化 | 上司の言葉や業界の常識に依存しすぎると、組織が盲目的になりイノベーションが止まる。思考訓練が組織文化にも必要。 |
💡 心得まとめ(結びのことば)
「心を育てねば、迷いが忍び寄る。」
「無知は、静かに、確実に、心を蝕む。」
この偈は、欲望や怒りと同じように、**「無知=真理を見ない心」が、心に大きな損害を与えることを教えてくれます。
無知は、気づかないままに入り込み、間違った信念や判断を生み出します。
だからこそ、心を観察し、問い、修養し続けることで、「真実を見る力」**を培わねばなりません。
それが、迷いの時代を生き抜くための智慧なのです。
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