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📜 引用原文(出典:『ダンマパダ』第3章 第12偈)
屋根を粗雑に葺いてある家には雨が洩れ入るように、
心を修養してないならば、憎しみが心に侵入する。
(パーリ語原典:
Asārāṃ bhavitaṃ gehaṃ vuṭṭhī samativijjhati,
Tath’evaṃ abhavitaṃ cittaṃ doso samativijjhati.)
🪶 逐語訳
- 粗末に葺かれた家には、雨が染み込んでくるように、
- 修養されていない心には、怒り(憎しみ)が入り込む。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
屋根を粗雑に葺いた家(asārāṃ gehaṃ) | 心が無防備で、自制・訓練がなされていない状態の比喩。 |
雨(vuṭṭhī) | 外界からの刺激・困難・苦言・他者の言動など、感情を揺らす要因。 |
心を修養しない(abhavitaṃ cittaṃ) | 心を内省し、観察し、訓練することなく放置した状態。 |
憎しみ(dosa) | 怒り・嫌悪・敵意など、仏教の「三毒」の一つ。心を焼き尽くす感情の代表。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
手入れがされていない屋根から雨がしのび込むように、
心の修養を怠れば、怒りや憎しみが知らぬ間に心に染み込んでくる。
それはじわじわと、心を濁らせ、言葉と行動を破壊へと導いていく。
🔍 解釈と現代的意義
この偈は、前偈(第11偈)と対をなす形で、「修養のない心」が情欲だけでなく怒りにも弱いことを示しています。
怒りや憎しみは、一瞬で爆発するものではなく、
ちょっとした不満・期待外れ・すれ違いから、
まるで雨漏りのように静かに、確実に心に染み込んでいきます。
この教えは、「怒りを外的なもののせいにするのではなく、心の備えの欠如として見なさい」という
内省への強い呼びかけでもあります。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
職場での対人ストレス | 部下や同僚とのちょっとしたすれ違いが、心の修養がないまま放置されると、怒りや敵意に変化してしまう。 |
クレーム・トラブル対応 | 感情が先走ると対応を誤りやすい。心を整えておけば、冷静さを失わずに誠実な対応ができる。 |
感情のトリガーへの耐性 | 自分の価値観に反する言動を見たとき、心が訓練されていないと即怒りになる。心の備えが“間”をつくる。 |
組織文化づくり | 組織内で怒りや不満が蔓延する背景には、構造的な問題だけでなく「心を整える文化」がないことが多い。 |
💡 心得まとめ(結びのことば)
「怒りは嵐のようには来ない。雨漏りのように沁みてくる。」
「心の手入れこそ、怒りから身を守る盾である。」
怒りは、他人が引き起こすものではありません。
その元をたどれば、自分の中にある「不安定な心」「整えられていない心」にあります。
それは、いつの間にか心の中に染み込んでいく「雨」のようなもの。
だからこそ、日々の心の点検と修養こそが、怒りを防ぎ、清らかな生き方を支える基盤なのです。
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