目次
🔖 原文(日本語訳)
「この世における愛欲の楽しみと、
天上における楽しみとは、
愛執を滅ぼした楽しみの十六分の一にも及ばない。」
――『ダンマパダ』第2章「不放逸品」第31偈
📝 逐語訳
- 愛欲の楽しみ(カーマスッカ):感覚的快楽、性愛、物欲など、五欲による一時的な満足。
- 天上における楽しみ(ディヴァスッカ):天界的存在が享受する微細で持続的な快楽。
- 愛執(ラーガ):対象に対する執着心。特に感覚欲に対する心の依存。
- 滅ぼした楽しみ(ヴィーターガスッカ):愛執を滅した人に訪れる、穏やかで永続する安らぎ。
- 十六分の一にも及ばない:比喩的誇張表現により、質の違いを強調。
🧩 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
カーマ(愛欲) | 物質的・性的・感覚的な対象への欲望。 |
ディヴァ(天上) | 六欲天など、功徳によって生まれ変わる天界の存在。 |
ヴィーターガ(離愛者) | 愛欲・執着を超越し、心が自由になった修行者。 |
スッカ(楽しみ/安楽) | 単なる快感でなく、真理に根差した深い満足感を指す場合もある。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
この世の感覚的な楽しみや、天界の洗練された快楽でさえ、
欲望と執着を滅した人が得る深い喜びには到底及ばない。
真の安らぎとは、手に入れることではなく、手放すことの中にある。
💡 解釈と現代的意義
この偈は、**「質の異なる幸福」**を理解せよ、という教えです。
- 物質や感覚の快楽は一時的で、次なる欲望を生む「不安定な幸福」です。
- 一方、愛執を断ち切った心は、外部条件に左右されず、「揺るがぬ静けさ」を得ています。
- 現代の「過剰な欲望経済」において、この句は「より少なく、より深く生きる」価値を思い出させてくれます。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
経営理念 | 一時的な利益や地位の追求よりも、誠実で持続可能な価値提供こそが「本当の喜び」である。 |
働き方 | 成果・称賛・昇進といった外的報酬よりも、「自律・貢献・心の充実」が長期的満足に通じる。 |
消費者理解 | 顧客もまた、物理的機能より「意味・体験・つながり」を求めている。本質的価値に焦点を当てる。 |
マインドセット | 他人との比較や欲望の追求から一歩引いて、「本質に集中する心の余白」を持つ。 |
✅ 心得まとめ
「深い喜びは、手に入れるよりも、手放すことで訪れる。」
表面的な快楽に満ちた世界の中で、
それらすべてを俯瞰し、執着なく生きる人だけが到達できる安楽がある。
それは、一時の快感とは次元の異なる、**「揺るがぬ満足」**です。
だからこそ、本当に欲しいのは、もっと多くのものではなく、もっと深い静けさなのです。
この偈は、愛執と解脱の質的ギャップを強調する重要な句です。
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