目次
🔖 原文(日本語訳)
「仏の現われたまうのは楽しい。
正しい教えを説くのは楽しい。
つどいが和合しているのは楽しい。
和合している人々が修養しているのは楽しい。」
――『ダンマパダ』第1章「双句品」第22偈
📝 逐語訳
- 仏の現われたまうのは楽しい:仏陀という目覚めた者がこの世に現れることは、世界にとって大きな福であり、歓びである。
- 正しい教えを説くのは楽しい:真理(ダルマ)を説き、それが人々の心を照らすことは、説く者にとっても、聞く者にとっても安らぎをもたらす。
- つどいが和合しているのは楽しい:僧団(サンガ)や集団が争いなく調和している状態は、心に平和をもたらす。
- 和合している人々が修養しているのは楽しい:集団が一致協力し、互いに励ましながら修行・学びに取り組む姿には、美しさと喜びがある。
🧩 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
仏(ブッダ) | 完全なる目覚め(悟り)を得た存在。導き手・真理の体現者。 |
正しい教え(ダルマ) | 宇宙と人間の根本法則。煩悩を離れて解脱に至る道。 |
つどい(サンガ) | 僧侶の集団に限らず、同じ志を持った人々の和合した共同体。 |
和合(サマッギー) | 意見や行動の一致・協調・争いのなさ。仏教における理想の関係性。 |
修養(バーヴァナー) | 自己を高める精神的・倫理的・実践的努力。瞑想・慈悲・学習などを含む。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
仏(悟りを得た者)が世に現れ、人々に真理を説くことは、この上なく幸いなこと。
その教えのもとに人々が争わずに集い、互いを尊重しながら共に学び合い、心を磨く――
このような光景こそが、もっとも清らかで、もっとも喜ばしい人間社会の姿である。
💡 解釈と現代的意義
この章句は、仏教の三宝(仏・法・僧)に関わる「四つの歓び」を挙げています。
現代社会においても、
- 信頼できる導き手がいること、
- 真理ある言葉に触れられること、
- 争いのない集団に属していること、
- 人々と共に成長し合えること
――これらはすべて、物質的豊かさを超えた精神的な幸福の源です。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
リーダーシップと指導 | 組織に明確なビジョンや道筋を示すリーダーの存在は、メンバーに安心と目的意識を与える。 |
価値ある知の共有 | 真理に近い知見・理念・原理が職場で共有されることは、メンバーの意識と行動を高める。 |
チームの和合 | 役割や立場を超えて調和しているチームは、生産性と幸福度が高く、持続可能である。 |
共育・共成長文化 | 互いの成長を支援し合う職場は、自己実現の場であり、働くこと自体が歓びとなる。 |
✅ 心得まとめ
「導きと教えがあり、人が和し、共に高め合う――それが、最も美しい幸せのかたちである。」
誰かが真理を語り、それを敬い、受け取り、共に実践し合う社会――
それは戦争も争いもなく、他人を尊び、人と人がともに高め合う本来の世界です。
仏教が描くこのビジョンは、現代の私たちにとっても、心の拠り所と理想像となるものです。
この第22偈をもって、『ダンマパダ』第1章「双句品(楽しいこと)」は完結いたします。
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