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■引用原文(日本語訳)
二三*
善をなすのを急げ。
悪から心を退けよ。
善をなすのにのろのろしたら、
心は悪事をたのしむ。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- 善をなすのを急げ:良いと分かったことは、ためらわずにすぐ実行せよ。
- 悪から心を退けよ:悪しきことに心を近づけるな。関心を持つな。
- 善をなすのにのろのろしたら:ぐずぐずと迷い、実行を遅らせていると、
- 心は悪事をたのしむ:怠惰や欲望が隙をついて入り込み、悪の誘惑に傾いてしまう。
■用語解説
- 善(ぜん):仏教における善は、他者にも自分にも有益な行為。誠実、慈悲、正直、努力などを含む。
- 急ぐ:ここでは「機を逸さず、素早く実行する」という意味。意志が熱いうちに行動に移す。
- 退ける(しりぞける):物理的・心理的に距離を取り、関与しないこと。
- 心は悪事をたのしむ:人の心は放っておけば、欲や怠惰・怒りといった「悪しき楽しみ」に自然と傾く性質がある。
■全体の現代語訳(まとめ)
善いことだとわかったら、ためらわずにすぐに実行しなさい。
そして、悪いことからは心を遠ざけなさい。
もし善行をぐずぐずと先延ばしにしていると、心はやがて悪に惹かれてしまう。
■解釈と現代的意義
この偈は、「意志のタイミング」と「行動の速さ」が、人生の善悪を分けるという重要な心理的洞察を含んでいます。
人は本来、怠けやすく、快楽に傾きやすい存在です。
だからこそ、善の機会が訪れたときに「すぐ動くこと」が非常に重要なのです。
逆に、心に空白や迷いが生じると、そこに悪が入り込み、私たちは気づかぬうちに善から遠ざかっていきます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
意志決定の実行力 | 良いアイデアや提案を「後でやろう」と先延ばしにすると、機会を逸し、惰性に流れてしまう。 |
倫理判断 | ルール違反や不正を見かけたとき、すぐ対処・報告しないと、問題が常態化しやすくなる。 |
習慣づくり | 善き行動(挨拶、感謝、整理整頓、傾聴など)は「すぐやる」ことで習慣になりやすい。 |
チームの雰囲気 | 善意や協力の機会を放置せず、素早く形にすることで、良い文化が醸成される。 |
■心得まとめ
「善は待たず、心は流れる」
良きことを思ったならば、すぐ行動に移すべし。
そうでなければ、心は怠惰や欲望に傾き始める。
――善は熱いうちに打て。
遅れは、そのまま悪への入り口となる。
この偈は、「モチベーション維持」「実行力の教育」「倫理の即時実践」などに応用でき、日々の意思決定や行動指針にも役立ちます。
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