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■引用原文(日本語訳)
二一*
人がもしも悪いことをしたならば、
それを繰り返すな。
悪事を心がけるな。
悪がつみ重なるのは苦しみである。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- 人がもしも悪いことをしたならば:すでに誤った行為をしてしまったとき、
- それを繰り返すな:同じ過ちを再び行うことを避けよ。
- 悪事を心がけるな:積極的に悪に心を向けてはならない。
- 悪がつみ重なるのは苦しみである:悪行を重ねることは、後に大きな苦しみを引き起こす原因となる。
■用語解説
- 悪いこと(悪事):他者を傷つける、自己を傷つける、道徳的・精神的に不健全な行為。
- 繰り返す:習慣化・常態化することで、人格や運命に深く影響を与える。
- 心がける:意図的に考え、選択し、習慣とすること。
- 苦しみ(ドゥッカ):仏教では「苦」は結果的に生じる不安、後悔、信頼の損失、精神的動揺などを含む。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえ一度悪いことをしてしまっても、同じ過ちを繰り返してはならない。
心を悪に向けるな。
なぜなら、悪行を重ねれば重ねるほど、その人は深い苦しみに陥るからである。
■解釈と現代的意義
この偈は、「過ちを悔いるだけでなく、繰り返さないことが重要である」と明言しています。
人は誰しも過ちを犯しますが、それを放置したまま、あるいは「仕方ない」と開き直ることで、悪は常態化し、心も行動も濁っていきます。
しかし、そのサイクルを断ち切る勇気と意志を持てば、苦しみの連鎖を断つことができるのです。
仏教の「懺悔」とは単なる反省ではなく、「二度と繰り返さぬという行動の変容」を意味します。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
再発防止 | 小さな不正やミスを軽視して繰り返せば、やがて重大なトラブルや信用失墜につながる。 |
組織文化 | 間違いに対して寛容であることと、「再犯に甘いこと」は別。学びと是正の仕組みが必要。 |
倫理的判断 | 悪いことを「うまくいったからいい」と見逃すと、それが悪習として自他に苦しみをもたらす。 |
自己改善 | 自分の弱さや習慣を見直し、繰り返さない仕組み(リマインダー・振り返り)を持つことが自己成長の鍵となる。 |
■心得まとめ
「過ちは許されるが、繰り返しは苦しみを呼ぶ」
一度の過ちは人間の性、
だが、それを繰り返すかどうかで人生が決まる。
――悪を重ねれば、それはやがて苦しみとして自分を覆う。
だからこそ、今こそ立ち止まり、選び直すのだ。
善き方へ、清き方へ。
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