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■引用原文(日本語訳)
一七*
善人は善をなし易い。
悪人は善をなし難い。
悪人は悪をなし易い。
聖者は悪をなし難い。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- 善人は善をなし易い:心が清く、善を常とする人は自然に善い行為を選ぶ。
- 悪人は善をなし難い:悪しき性向に染まった者は、善を選ぶのが難しい。
- 悪人は悪をなし易い:煩悩や欲望に従うままに、自然に悪を選んでしまう。
- 聖者は悪をなし難い:心を修めた聖なる者は、悪に傾くことが極めて難しい。
■用語解説
- 善人:誠実・慈悲・正直など、内面が整い、善なる傾向を習慣としている人。
- 悪人:利己心・怒り・無知に支配され、悪い行動を繰り返す人。
- 聖者(アーリヤ):煩悩を克服し、善悪の見極めと実践を体現した高い修養を持つ存在。
- なし易い/なし難い:「行いやすさ」は一時の意志ではなく、日頃の習慣や心の傾きの蓄積によって決まる。
■全体の現代語訳(まとめ)
善を習慣とする人は、自然と善いことができる。
悪に染まった人は、善いことを選ぶのが難しく、悪に流れやすい。
しかし聖者は、悪に心を向けることさえ難しい。
人の行為は、その人の心と日々の選択の積み重ねによって決まっている。
■解釈と現代的意義
この偈は、「行為の善悪は性格ではなく“習慣”によってつくられる」という、仏教心理学的な視点を示しています。
善いことを続ければ、それは自分の一部になり、やがて自然にできるようになる。
一方、悪しきことを重ねてしまえば、それもまた「自分らしさ」となって根づいてしまう。
つまり、何を“選ぶか”が人生を形づくり、“繰り返すこと”が自分の本性を養っていくのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
習慣形成 | 小さな善行(時間厳守、丁寧な言葉、報連相)を続けることで、信頼ある人物像が自然に形成される。 |
評価と採用 | 単なる能力ではなく、「善を自然に選べるか」という行動特性が、長期的に組織に貢献する人材の基準となる。 |
リスク管理 | 不正や虚偽を繰り返すと、それが「当たり前」になり、善き判断が困難になるリスクがある。 |
リーダー育成 | 模範となるリーダーは、善を「意識的に」ではなく「無意識に」選べる人物であるべき。 |
■心得まとめ
「日々の選択が、あなたの“当たり前”をつくる」
善を積む者は、自然に善をなす。
悪に慣れる者は、無意識に悪を繰り返す。
――その違いは、生まれつきではない。
日々の心がけと、選び続けた行為によって、人は形づくられていくのです。
この偈は「習慣の力」「セルフマネジメント」「倫理的リーダーシップ」などに直結するテーマを含みます。
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