目次
■引用原文(日本語訳)
二*
わかち与える人には功徳が増大する。
みずからを制するならば、ひとが怨みをいだくことは無い。
善い人は悪を捨てる。
情欲と怒りと迷妄とを捨てるが故に、煩悩の覆いをのがれる。
―『ダンマパダ』より
■逐語訳
- わかち与える人には功徳が増大する:他者に物や心を施す人は、その徳が自ずと積み重なり増えてゆく。
- みずからを制するならば、ひとが怨みをいだくことは無い:自らの言動や感情を律する者は、他人からの恨みや敵意を招かない。
- 善い人は悪を捨てる:善を志す人は、意識的に悪しき行いを断ち切る。
- 情欲と怒りと迷妄とを捨てるが故に:欲望・怒り・無知という三毒を捨て去るがゆえに、
- 煩悩の覆いをのがれる:煩悩による心の曇りや束縛から自由になる。
■用語解説
- 功徳(くどく):善行によって蓄積される善なる因果的報い。心の豊かさ、信頼、幸運などを意味する。
- 自制(じせい):感情・言葉・行動を理性でコントロールすること。仏教では重要な実践項目。
- 三毒(情欲・怒り・迷妄):仏教における根本的な煩悩。貪(欲望)、瞋(怒り)、癡(無知)を指す。
- 煩悩の覆い:心の本性(清らかさ)を曇らせ、真理を覆い隠すもの。苦しみの原因となる。
■全体の現代語訳(まとめ)
与えることによって人は善い影響を拡げ、自制によって他者との軋轢を避けることができる。真に善き人は、自らの中にある悪しき性質を見極め、それを手放してゆく。特に、欲望・怒り・無知という三つの根本的な煩悩を克服することで、人は自由で平和な心を得ることができる。
■解釈と現代的意義
この節は「自己を整えることで他者との調和が得られる」という倫理の基本を説いています。
布施(分け与えること)は自己中心性の打破、自制は無用な争いの予防、そして煩悩の手放しは本質的な自由をもたらす道です。現代社会のストレスや競争の中にあっても、この三つを実践することで、私たちはより健やかに、他者と平和に共存できます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
与える(布施) | ノウハウの共有、利他性のあるサービス、顧客・同僚への誠実なサポートは、信頼と成果を生む資産になる。 |
自制 | 感情的にならず冷静に判断することが、リーダーとしての信用や、トラブル回避に直結する。 |
手放す | 欲望や怒り、執着に流されるのではなく、「執着しない決断」を持つことで、真にクリアな経営判断が可能になる。 |
■心得まとめ
「与えて広がり、律して和し、捨てて自由になる」
この三つは、個人の成長のみならず、組織の文化や社会的信頼の基盤となる。
何かを得ようとする前に、まず「何を与え、何を律し、何を捨てるか」を問い続けることが、真のリーダーの道なのです。
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