目次
📖引用原文（日本語訳）
一五＊
この世で妄執を断ち切って、静かならしめ、
すべての塵汚れをおさめて、
河の水を乾かしてしまったならば、
苦しみが終滅すると説かれる。
🔍逐語解釈と用語の意味
| 表現 | 解釈 |
|---|---|
| 妄執を断ち切る（アスミマーナ断） | 「自分」「私のもの」といった執着の根を絶つこと。 |
| 静かならしめ（シャーンティ） | 心が騒がず、動揺せず、完全な沈黙と平穏にある状態。 |
| 塵汚れ（クレーシャ） | 煩悩・怒り・嫉妬・欲望など、心を曇らせる要素。 |
| 河の水を乾かす（タルカ・ナーイカ） | 生死・輪廻という流れを止めるたとえ。煩悩の源を断って流れを枯らすこと。 |
| 苦しみの終滅（ドゥッカ・ニローダ） | 一切の心の苦から完全に自由になった状態＝ニルヴァーナ。 |
🧘♂️全体の現代語訳（まとめ）
この現実の中で「妄執」という心のしがらみを断ち切り、
心を静かに鎮め、煩悩や欲望という塵を拭い去り、
さらに、苦しみや迷いの流れ（河）を根本から乾かしきったならば、
そこにこそ苦の終滅＝ニルヴァーナがあると、仏陀は説かれている。
💡解釈と現代的意義
この句は、まさに「悟り（解脱）の完成の姿」を簡潔に描いたものです。
仏教において、苦しみを生む三つの要因は以下です：
- 無明（無知）
- 渇愛（欲望）
- 執着（妄執）
この句では、それらを「塵」や「河の水」として象徴的に語り、
**それを断ち切った者が得る“静けさ”＝究極の安らぎ（ニルヴァーナ）**への道を示しています。
現代人もまた、情報・人間関係・欲望・競争によって「絶え間ない流れ」にさらされています。
この句は、そうした流れを「外から止める」のではなく、内側から“涸らす”ことによってしか解放は訪れないという核心を伝えています。
💼ビジネスにおける適用
| 観点 | 適用内容 |
|---|---|
| 執着の手放しによる判断の明晰化 | 「成功」「評価」「自分のポジション」への執着が、判断を曇らせる原因となる。妄執を離れた決断は、最も中庸で的確。 |
| 情報・感情の“塵”を払う力 | 日々の雑多な情報や他人の感情に振り回されず、静かで清明な心を保つことで、集中力・創造性が高まる。 |
| “流れ”を自ら断つ勇気 | 悪循環のプロジェクトや不要な業務の継続など、「止める」判断ができるのは、心の静かな者だけ。 |
| リーダーの精神的成熟 | 組織やチームを導くリーダーにこそ、「動じない」「汚れない」「流されない」心の強さが求められる。 |
✅心得まとめ
「苦しみの河を止めるのは、静かな者だけである」
心を悩ませるのは、外の波ではなく、内に溜まった塵と流れである。
妄執を断ち、怒りや欲望を浄化し、
流されるのではなく、静けさを保つことが、安らぎへの道。
流れの中にいながらも、
その流れを自ら涸らす者が、本当の自由を手にする――
その境地を、私たちもまた日常の実践の中で育むことができます。
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