目次
■引用原文(日本語訳)
一七
愚かな者は、生涯賢者たちにつかえても、正しくさとりを開いた人(=仏)の説かれた真理をはっきりと知ることがない。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
- 愚かな者は、
- 一生涯、賢者――ましてや悟りを開いた仏陀――に仕えたとしても、
- その人(仏陀)が説いた真理を明確に理解することができない。
- それは、その者自身に智慧の眼が備わっていないからである。
■用語解説
- 愚かな者(バール):内省せず、教えを実践せず、学びの姿勢が欠けた者。
- 賢者(パンディタ):真理を知り、実践し、他者を導く者。
- 正しくさとりを開いた人(サンマ・サンブッダ):完全なる悟りを自ら得た仏陀。真理の体現者。
- 真理(ダンマ):仏教においては「法」とも訳され、道徳的・宇宙的・精神的な根本原理を指す。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえ仏陀のように真理そのものを体現する存在に仕えていても、心が閉ざされ、学びの智慧を欠いている者は、その教えの本質を理解することができない。
“誰に学ぶか”よりも、“どう学ぶか”“学ぶ力があるか”がすべてを決めるのである。
■解釈と現代的意義
この章句は、「最高の教えですら、それを受け取る器がなければ意味をなさない」という仏教における“受信者の質”の決定的な重要性を示しています。
これは現代においても非常に実践的な警句です。名著を読んでも心が響かない人、優れた師に出会っても何も得ない人は、情報や環境ではなく、「自らの理解力・姿勢・感受性」の問題に向き合う必要があります。
すなわち「外のせいにせず、まず内なる心を澄ませよ」というメッセージです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーシップ教育 | 最良のリーダーやメンターがいても、学ぶ者に意欲と受け入れの心がなければ変化は起きない。 |
社内コミュニケーション | 組織で理念や方針を示しても、内面で「理解しようとする意志」がなければ、伝わらず空文化になる。 |
育成制度設計 | 教える内容以上に、育成される側のマインドセット形成が鍵となる。 |
自己啓発 | 成功本やセミナーを「消費」するだけでは変わらない。真理を受け取れる自分づくりこそ本質。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「教えの深さは、聞く耳の深さで決まる」
仏陀のそばにいようと、心が閉じていれば、真理は届かない。
教えはすでにそこにある。問題は、それを見抜ける眼と、聞き取れる心があるかどうか。
だからこそ、学ぶ者は、まず自らの“器”を磨き続けることが最も大切なのである。
この章句で、「愚者と真理」についてのテーマは最終段階に入りました。
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