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己は果物籠。何を入れるかで、香も味も変わる


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■引用原文(日本語訳)

一二*
それ故に、賢者は、自分は、果物籠が(中にいれる果物に)影響されるようなものである*ということわりを見て、悪人と交るな。善人と交れ。
――『ダンマパダ』


■逐語訳(意訳を含む)

  • 賢者はこう理解するべきである:
  • 「自分は、果物籠のようなものであり、そこに入れる果物の香りや状態に影響される存在である」
  • だからこそ、悪しき人々と交わることを避け、
  • 善き人々と交わるように努めるべきである。

■用語解説

  • 果物籠(パラ・ピンディ):ここでは「人の心・人格」を象徴する比喩。外的な影響に敏感で、染まりやすい存在。
  • 影響される(ヴィサ):香りや状態が伝播するように、接するものによって変化を受けること。
  • 悪人(パーパ・プルシャ):不正・不誠実・品性の低い行動を繰り返す人物。
  • 善人(クシュラ・プルシャ):徳・知恵・誠実さを備えた人格者。
  • ことわりを見て(ダンマム・パッシ):物事の道理・原理を理解すること。仏教的には「真理を見る目」を意味する。

■全体の現代語訳(まとめ)

人は、自分では変わらないつもりでも、関わる相手や環境によって徐々に変化していく。
まるで、果物籠の中にひとつ強い香りの果物があれば、他の果物もその香りを帯びるように。
だからこそ、賢き者は「自分は環境に影響される存在だ」ということを自覚し、悪しき者との交わりを避け、善き者との関係を選び取るのである。


■解釈と現代的意義

この章句は、「人間は孤立した存在ではなく、つねに関係性の中で形成される」という仏教的縁起の思想を、比喩を用いてわかりやすく伝えています。
多くの人は「自分は自分」「影響なんかされない」と思いがちですが、実際には日常の人間関係、言葉、行動、態度によって気づかぬうちに影響され、人格も変化していきます。
このことを理解し、環境の選択に意識的であること――それこそが、賢者の生き方なのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
組織文化個々の社員がいかに優秀でも、組織の雰囲気が不健全であれば、その影響で質が低下することがある。
チーム配属・異動成長を促すには、良い雰囲気と価値観を持つチームへの配属が効果的。悪影響を及ぼす環境は回避すべき。
採用・パートナー選定単なる能力だけでなく、その人が持つ「文化的影響力」を考慮することが大切。
自己管理自分の成長を望むなら、まずは「善い香り=徳のある人」に囲まれる環境を整えることが第一歩。

■心得まとめ(感興のことば)

「人は、誰と共にあるかで、香りも色も変わる」
たとえ中身は同じでも、果物籠に何を入れるかで香りは変わる。
それと同じように、人もまた、誰と交わるかによって人格が育ち、あるいは濁っていく。
だからこそ、己を磨くには、まず己の環境と交友を選び取ることが必要なのだ。

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