目次
■引用原文(日本語訳)
八*
人がパラーシャの葉でタガラ*(香木の粉末)を包むならば、その葉もまた芳香をただよわす。同様に、立派な人々と交るならば、善いことが現われる。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
- パラーシャ樹の葉で、タガラ(香木の粉)を包めば、
- その葉もまた香木の香りを帯びるようになる。
- それと同様に、人格の優れた立派な人々と関わるならば、
- その人の徳が伝わり、自分にも自然と善き性質が現れてくる。
■用語解説
- パラーシャの葉(Pārāsa):香りを持たない普通の葉。ここでは“平凡な存在”の象徴。
- タガラ(Tagara):インド原産の芳香植物。白檀のように香り高く、粉末は香料や薬用にも用いられる。
- 芳香をただよわす:香りのように、見えないが確実に周囲に良き影響を与える性質。
- 立派な人々:徳・知恵・品格を備えた人物。行いによって周囲に良き波及効果をもたらす存在。
■全体の現代語訳(まとめ)
香りのない葉であっても、香木の粉に包まれれば芳香を放つようになる。
それと同じように、自分が未熟であっても、徳と知恵ある人物と交わることで、自然と善き性質や品格が身につく。
人は環境によって変わる。だからこそ、よき人との交わりは、自らの香りを育てる道である。
■解釈と現代的意義
この章句は、「徳は伝染する」というポジティブな縁起の原理を説いています。
人は他者の言葉や振る舞いに無意識に影響されますが、それは悪だけでなく善にも当てはまります。
善き人と交われば、自分の中にも善きものが芽吹き、自然と振る舞いが洗練されていくのです。
だからこそ、自分を変えたければ「善き人のそばにいること」が、もっとも効果的な第一歩になります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
人材育成 | 品格・実力ともに備えた人物のそばで働くことで、若手も自然とよい習慣や思考法を身につける。 |
社風形成 | 一部の誠実で人間力の高いリーダーが、組織全体に芳香のようなポジティブな空気を拡げる。 |
採用方針 | 高い価値観と志を持つ人材の参画が、全体の行動や発言の質を底上げする。 |
自己投資 | 自分を変えたいなら、まずは「尊敬できる人のそばに身を置く」ことから始めるのが最も近道。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「人の香りは、人に染まる」
香木のような人物と交われば、言葉や姿勢の香りが自らにも染み込む。
だからこそ、徳ある者とともに在ることは、最上の修行であり、最良の自己投資である。
人は交わる人によって香り、高められていく。
コメント