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己を整えし者、涅槃に至る


■ 引用原文(日本語訳)

この世では自己こそ自分の主である。
他人がどうして(自分の)主であろうか?
賢者は、自分の身をよくととのえて、ニルヴァーナの近くにある。
以上、第二三章「自己」
――『ダンマパダ』第26節(二六*)


■ 逐語訳と用語解説

  • 自己こそ自分の主:人生・感情・行動の主権は、自分自身にある。仏教における自己責任と自律の核。
  • 他人がどうして主であろうか?:他者に主導権を渡すことで、真の成長と解放は得られない。
  • 賢者(パンディタ):日々自らの言行と心を整え、内なる煩悩と向き合いながら歩む者。
  • 身をよくととのえる:規律ある生活、慎み深い言葉、誠実な行為、心の安定の継続。
  • ニルヴァーナ(涅槃):一切の苦・欲・無明を超えた絶対の静寂。仏教における最終目的。ここでは「近づいた状態=直前の境地」として描写される。

■ 全体の現代語訳(まとめ)

「この世において、自らを導くのは自分自身である。
他人にその主導を委ねるべきではない。
賢者は、自分の心と言葉と行いをよく整えることで、
ついには、悟りの光が差し込む涅槃の門前に立つようになる。


■ 解釈と現代的意義

この句は、「自己こそ主なり」というシリーズの精神的到達点として、“近づく”という表現で涅槃(悟り)を描いています。
つまりこれは:

  • 整えた生き方そのものが、すでに悟りへの歩みである
  • 悟りとは、どこか遠くにあるものではなく、日々の自己との向き合いの中にある

という仏教の核心的思想を端的に表しています。

また、「涅槃に近づいた者」が描かれていることから、これは「結果」ではなく「過程を重んじる智慧」でもあり、現代にも深く通用する教えです。


■ ビジネスにおける解釈と適用

領域適用例
リーダーの在り方成果や結果に執着せず、日々の判断・態度・行動を整え続けることが、最終的に組織を導く光となる。
キャリア構築表面的な成功ではなく、心の整いによって「本質的な満足・充足」=“悟りに近い働き方”が実現できる。
メンタルヘルス完全にストレスゼロになるのではなく、「日々整え続ける中で、穏やかさが増していく」実践型の安心感。
人格的影響力自分の中に矛盾や乱れが少なくなるにつれ、他人に対して押し付けずとも“導く力”が自然に発現する。

■ 感興のことば(心得まとめ)

「整える者は、すでに涅槃に足を踏み入れている」

悟りとは、遠くの理想ではない。
日々の言葉、行動、心の調律の中に、
すでにその光は差している。
他人ではなく、自分を整えるその道のりこそが、
すべての苦を超える門である。


目次

✦ 総まとめ:第二三章「自己」全体の構造 ✦

節番号到達点
第11–12節目的の自覚と自己の整え
第13–20節徳行・名声・知慧の獲得
第21–23節親族に輝き、束縛を離れる
第24–26節苦の超越 → 涅槃への接近

第二三章は、「自己を主とする生き方」から「悟りへの到達」までの完全な階梯を描く章であり、
「整える者こそが、人生と世界を変えられる」ことを静かに、力強く伝えてくれます。

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