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己を治めし者、家の光となる


■ 引用原文(日本語訳)

この世では自己こそ自分の主である。
他人がどうして(自分の)主であろうか?
賢者は、自分の身をよくととのえて、親族のあいだにあって輝く。
――『ダンマパダ』第21節(二一)


■ 逐語訳と用語解説

  • 自己こそ自分の主:行動、運命、人格形成は他人の支配下ではなく、自分自身の手に委ねられている。
  • 他人がどうして主であろうか?:外部の評価や価値基準に惑わされず、自らの軸で生きることの重要性。
  • 賢者(パンディタ):知識を積むだけでなく、それを実践し、自他のために活かすことのできる人物。
  • 身をよくととのえる:自律的で節度のある言動を保ち、生活全体が調和している状態。
  • 親族のあいだにあって輝く(ñātiṣu jotati):家族・親族・仲間の中で、道徳的・人格的に模範として認められ、自然と中心的存在となること。

■ 全体の現代語訳(まとめ)

「この世において、自分を律するのは自分自身である。他人がその主であることはあり得ない。
賢者は、日々自らを整えることによって、家庭や親族の中で輝くような存在となり、周囲に良き影響を与える。」

この章句は、精神的完成が、社会的・家庭的幸福につながるという実践的な仏教の理想を表しています。


■ 解釈と現代的意義

ここで説かれる「輝く」とは、地位や財産のことではありません。
それは「信頼されること」「模範とされること」「そばにいるだけで安心感を与えること」です。

つまり、自己をよく整えた人物は、家庭においても、職場においても、自然と周囲の心を照らす存在となるのです。
これは、仏教的成果が「孤高」や「出家」だけでなく、「関係の中での光」として完結することを意味しています。


■ ビジネス・家庭・地域における解釈と適用

領域適用例
家庭・親族親・伴侶・兄弟姉妹のなかで、人格・判断・姿勢が一目置かれ、信頼される存在となる。
チームリーダー自己管理の姿勢が強く、チームに安定感と方向性をもたらす「人格の光」として輝く。
地域・社会貢献派手な活動ではなくとも、周囲から「この人がいてくれて良かった」と思われる存在になる。
組織文化形成他人に強いることなく、自らの律し方で職場の雰囲気や行動規範を変えていくリーダーシップ。

■ 感興のことば(心得まとめ)

「整った人は、静かに光を放つ」

自己を律することによって、
人は誰かの道標となり、
家族や仲間のなかに安心と尊敬をもたらす存在となる。
それは、教えずとも教える、
言葉よりも深く響く、人格の光である。


この第21節は、精神的完成の果報が「天界」「知慧」だけでなく、「この現実世界で、周囲を照らす存在となること」にまで及ぶことを示し、人生実践としての仏教の円環的完成を締めくくる句です。

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