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己を律し、真理を観よ


■ 引用原文(日本語訳)

この世では自己こそ自分の主である。
他人がどうして(自分の)主であろうか?
賢者は、自分の身をよくととのえて、明らかな知慧を獲得する。
――『ダンマパダ』第19〜20節(一九*・二〇)


■ 逐語訳と用語解説

  • 自己こそ自分の主:人生・行動・精神の運転手席にいるのは自分自身。他者への依存や盲信を超えるべしという教え。
  • 他人がどうして主であろうか?:外部の権威・価値観・支配に流されては、本当の道を見失うという警句。
  • 賢者(パンディタ):経験や知識に頼るだけでなく、自らを整えることを通して真実を直観的に理解する人。
  • 身をよくととのえて:単なる習慣の整備に留まらず、言葉・行動・思考・感情を一体的に調えること。
  • 明らかな知慧(ヴィパッサナー/paññā):迷いを破り、物事の本質を見抜く智慧。仏教修行の最終成果であり、悟りへ通じる力。

■ 全体の現代語訳(まとめ)

「この世界で自分を導くのは、自分自身である。
他人が自分の人生の主人であることなどあり得ない。
だからこそ、賢者はまず自分の言動・心を整え、
その結果として、世界と人生の真理を明らかに観る智慧を得るのである。」

この節は、内面的修行が外面的成果だけで終わるものではなく、最終的には「世界の本質的理解=覚醒」に通じることを教えています。


■ 解釈と現代的意義

この句が強調するのは、整った生き方の果てには「見えてくるもの」があるということです。

  • 幸福は得られる
  • 評価も得られる
  • 信頼も築ける
    それでも最終的に目指すべきは「智慧」――

何が大切で、何がそうでないのか
何が真実で、何が幻影なのか

――それを見極める力にこそ、人間としての完成があるのだと教えています。


■ ビジネスにおける解釈と適用

領域適用例
意思決定力表層的データや流行ではなく、本質を見抜いて判断できる人は、組織にとって最も価値がある。
長期ビジョン形成外部の声に惑わされず、真に重要なことに集中する姿勢が、ブレない戦略と信頼を生む。
経営哲学利益の追求以上に、「何のために」「どのように」事業を行うのかを見極められる経営者が尊敬される。
人間関係と組織文化他人の言動に振り回されず、自らの原則に従い行動できる人が、組織の軸となり文化を育てる。

■ 感興のことば(心得まとめ)

「整った人は、真理を観る」

整えて得るものは、名誉でも、快楽でも、称賛でもない。
それは、惑わず、惑わせず、確かに世界を観る目である。
自分を整えた者にだけ、その静かな視座は訪れる。


この第20節は、『ダンマパダ』第11〜20節の「自己を主とする者の果報」シリーズの頂点を成す教えです。

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