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聞いて留め、育てて成す――知は一歩ずつ力となる


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■引用原文(日本語訳)

一八 みごとに説かれたことばは、それを聞いて理解すれば精となる。
聞いたこと、識ったことは、心にじっととどめておくと精となる。
しかし人が性急であって怠けているならば、かれの知識も学問も大きな目的を達成することはできない。
――『ダンマパダ』 第二二章 第十八節


■逐語訳

  • みごとに説かれたことば:仏陀や賢者の教え。真理にかなった言葉。
  • 聞いて理解する:単に耳にするのではなく、意味を深く考える。
  • 心にとどめておく:すぐに忘れず、繰り返し思索し、内化する。
  • 精(せい)となる:力・智慧・人格として結晶化する。
  • 性急で怠けている:すぐに結果を求め、地道な努力を怠ること。
  • 大きな目的を達成できない:知識や学問が成果として実ることなく終わる。

■用語解説

  • 精(テージャ/精髄):精神的・道徳的・知的な力の結晶。人格を支える基礎力。
  • 聞く(スッタ):仏教では「学びの入口」。聞いて、考えて、修する三段階の第一歩。
  • 性急(アサンティ):焦り、落ち着きのなさ、短絡的志向。
  • 怠け(アーラッサ):努力を惜しむ態度。継続を断つ心の弱さ。

■全体の現代語訳(まとめ)

優れた教えは、それをしっかり聞き、理解し、
さらに心に留めて熟成させることで、
自らの智慧と力に変わっていく。
しかし、落ち着きを欠き、すぐに結果を求めて努力を怠る者は、
せっかくの知識も学問も、生かしきることはできない――
と仏陀は教える。


■解釈と現代的意義

この詩句は、学問や知識が「力」に変わるためには、聞く→考える→覚える→実行するという、
地道な積み重ねが必要であることを明確に示しています。
つまり、知識は「聞いた瞬間には完成しない」。
時間をかけて、心に留め、鍛え、発酵させて初めて、自分の血肉となるのです。

そして仏陀は、「性急さ」と「怠惰」がその熟成を阻み、
学問の価値を台無しにしてしまうことを、厳しく警告しています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点実務への応用
人材育成研修や読書で聞いた知識も、「反復」や「実践」を通して心に留めて初めて役に立つ。
リーダーの姿勢焦って結果を急ぐよりも、じっくりと理念を根づかせ、文化として育てていく姿勢が必要。
学びの定着ただ「知った」だけで終わらず、内省・日記・共有・フィードバックを通じて深く定着させる仕組みづくりが大切。
成果主義の危うさ短期的な目標に囚われすぎると、知が熟す前に評価が終わってしまう。継続と忍耐が真の価値を生む。

■心得まとめ

「急ぐ者は深まらず、怠る者は結ばれず。知は静かに、じわじわと力となる」

真理の言葉を聞いたとき、それを「すぐに使おう」「すぐに成果を得よう」と考えるのではなく、
じっと心に灯して、日々の行いの中で育てることが大切である。

それができる者こそが、知を智慧へ、学問を人格へと昇華できるのだ――
仏陀はそう教えているのです。


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