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すべてを信じるな、思慮をもって照らせ


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■引用原文(日本語訳)

一七 耳で多くのことを聞き、眼で多くのことを見る。
思慮ある人は、見たこと、聞いたことをすべて信じてはならない。
――『ダンマパダ』 第二二章 第十七節


■逐語訳

  • 耳で多く聞く:多くの情報、うわさ、教え、意見を耳にする。
  • 眼で多く見る:現象・行動・出来事・結果・視覚的印象をたくさん得る。
  • 思慮ある人(パンディート):賢明な人、深く考える力を持つ者。
  • すべて信じてはならない:見たまま聞いたままに反応せず、検討し、判断しなければならない。

■用語解説

  • 思慮(ヴィチャーラナー):よく考える力。深い観察・分析・内省・判断力を含む。
  • 見る・聞く(ダッサナ/スッタ):感官によって得られる第一印象。仏教では「不完全な真理の入口」とされる。
  • すべてを信じない:懐疑ではなく、智慧ある吟味と「軽信(けいしん)しない姿勢」を意味する。

■全体の現代語訳(まとめ)

人は多くのものを見、多くのことを聞く。
しかし、賢明な者は、それらすべてを鵜呑みにせず、
「何が真実か」「何が本質か」をよく考えて判断する――
と仏陀は警告している。


■解釈と現代的意義

この詩句は、情報時代を生きる私たちにとっても非常に鋭い警告です。
現代はSNS、メディア、動画、AIなどで無数の情報に触れる時代ですが、
「見た」「聞いた」=「正しい」とは限らず、むしろ多く見聞するほど錯覚・偏見・誤信が増す危険もあります。

仏陀は、知識や情報の量ではなく、
**「それをどう考え、どう見極めるか」**にこそ智慧の本質があると説いているのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点実務への応用
情報収集と判断力多くのレポートや市場分析を見ても、そのまま信じず、自分で問い直す姿勢が意思決定の質を高める。
メディア・SNSリスク社内外の噂やネット上の声をすぐに信じて動かず、根拠を確認し、全体像から判断する必要がある。
リーダーシップ部下の報告、顧客の声、数字――すべてを信じるのではなく、裏にある意図や背景を読む力が重要。
危機対応初期報道や印象で焦って動かず、「聞いた・見た」ことを一度棚卸して、落ち着いて判断することが信頼につながる。

■心得まとめ

「多くを見ても、すべてを信じるな。知とは疑い、考え、照らす力なり」

仏陀が説く学問とは、知識の蓄積ではなく、**「見たこと・聞いたことを吟味する眼差し」**です。
情報が多い時代だからこそ、真理を見極める力=思慮深さが価値を持ちます。

賢者はすぐに信じない。ゆっくり考え、慎重に進む。
そこにこそ、迷わず騙されず、ぶれない道があるのです。


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