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内も外も見通し、声に惑わぬ者となれ


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■引用原文(日本語訳)

一六 内をも明らかに知り、外をもはっきりと見て、
よりどころにとらわれないで明らかに知る人は、
実に音声に誘われることがない。
――『ダンマパダ』 第二二章 第十六節


■逐語訳

  • 内を明らかに知る:自己の心・動機・執着・感情などを深く見通している。
  • 外をはっきりと見る:現実世界・社会の流れ・他者の意図・環境の変化を観察できている。
  • よりどころにとらわれない:特定の信念や欲望、世間の価値観に固執しない。
  • 明らかに知る人:真理を冷静に見通し、バランスある眼で判断する人。
  • 音声に誘われない:言葉・評判・流行・プロパガンダに影響されず、自分の道を歩む。

■用語解説

  • 内(アッタ):自己の内面。心の動き、価値観、欲望など。
  • 外(バヒダ):現象界、社会、対人関係、環境状況など。
  • よりどころ(ニッサヤ):精神的支え、思想・信条・偏見・執着の対象。
  • 明らかに知る(ヴィディタ):思考ではなく、実践と直観によって得られる深い知見。
  • 音声(サッダ):世の声、意見、情報、誘惑、批判、称賛など。

■全体の現代語訳(まとめ)

内面も外の世界も深く理解し、特定の信念や執着に縛られずに、
正しくものごとを見通すことができる人は、
どんなに世間が騒ごうとも、その声に惑わされることはない――
と仏陀は教えている。


■解釈と現代的意義

この節は、第二二章の頂点に位置する完成された人物像を示しています。
その人物は、内省(自己理解)にも、観察(現実認識)にも長け、
しかも一つの意見や考え方に執着せず、柔軟かつ深く物事を見つめられる「智慧者」です。

こうした人物は、流行や称賛、風評、見た目の情報に影響されず、
静かに、確かな判断を下すことができる存在です。
仏陀はこの詩句で、「中道的で調和のとれた知者」こそが、
現代の混沌の中でも安定して歩める道を持つと示しているのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点実務への応用
真のリーダー像自己認識と環境理解の両面を持ち、流行やブームに流されない判断力を持つ人物が求められる。
組織運営社内外の情報を客観的に捉え、執着や信念に縛られず行動する組織は、環境変化にも強い。
意思決定利害や感情に惑わされず、「よりどころにとらわれない判断」が中長期的成功を生む。
情報リテラシーフェイクニュースや過剰な言説に流されず、冷静な情報精査と多面的思考が不可欠。

■心得まとめ

「外に揺らされず、内に閉じこもらず、すべてを見通す心を持て」

仏陀が示したのは、内と外、主観と客観、理念と現実をバランスよく見据える知者の姿である。
その人物は、どんなに声が飛び交っても揺れない。

自分を深く知り、世界を広く観て、何ものにも執着せずに歩む――その姿こそ、音声に誘われぬ者の道である。


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