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内にこもる者もまた、声に惑う


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■引用原文(日本語訳)

一四 内を明らかに見ているが、
外を見ないで、内のほうの結果ばかりを見ている人は、
実に音声に誘われる。
――『ダンマパダ』 第二二章 第十四節


■逐語訳

  • 内を明らかに見る:自己の内面、動機、精神的世界に深く向き合っている。
  • 外を見ない:現実の社会、人間関係、現象、他者の視点などを軽視または無視している。
  • 内の結果ばかりを見る:自己満足、自分の修行の成果、自我の状態にばかり注目する。
  • 音声に誘われる:その偏りゆえに、やはり外からの声(称賛・批判・誘惑)に動かされやすくなる。

■用語解説

  • 内(アッタ)を明らかに見る:内観・自省・瞑想などで心の動きを見極めていること。
  • 外を見ない:現実への接点を失い、他者との関係性や社会的行動から離れること。
  • 音声に誘われる:自分の信念や内的成果に没入していても、外からの評価や言葉に簡単に揺れる心理。

■全体の現代語訳(まとめ)

自分の内面ばかりを見て、社会や現実の動きに目を向けず、
精神的な自己の成長ばかりを気にしている人は、
見た目には賢明に見えても、やはり人の言葉や声に惑わされてしまう――
と仏陀は、内省に偏る者にも注意を促している。


■解釈と現代的意義

この詩句は、**「内省的な人間にも盲点がある」**という、きわめて深い洞察を含んでいます。
一三節では「外にばかり目を向ける者」を戒めましたが、今度は逆に、内面に閉じこもる者もまた危ういと説いています。

心の内を深く見つめる修行や思索は尊いことですが、それが独善的な自己満足や閉鎖的思考に陥ると、
かえって外の評価や言葉に過剰に反応し、揺れてしまう危険があります。

仏陀はここで、「内も外も、共に見よ」「バランスをもって真理に向き合え」と諭しているのです。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点実務への応用
思索型人材の盲点深い思考や理念を持つ人でも、現場や社会の動きに無関心だと、実効性を失い、人の言葉に左右される。
独りよがりのリーダー自分の信念に閉じこもりすぎると、現実との対話を失い、部下や顧客の声に過敏に反応するようになる。
バランス思考内省(理念・哲学)と、外部観察(市場・他者視点)の両方を持つことで、安定した判断が可能になる。
組織戦略ビジョン重視型経営でも、現場の声や外的環境に目を向けなければ、意外に脆くなるリスクがある。

■心得まとめ

「内ばかり見ても、真実は見えない。外ばかり見ても、同じである」

仏陀はここで、「一面的なまなざしは、どこまでも脆い」と教えています。
自己の内面にこもっても、現実の外に囚われても、どちらか一方では真理に至れない。
だからこそ、内を静かに見つめながら、外の現実にもまなざしを向けること――
それが、「音声に惑わされない知恵」への道なのです。

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