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■引用原文(日本語訳)
八 或る人が、たとい学問はわずかであっても、
徳行によく専念しているならば、
世の人々は、徳行についてかれを称讃する。
その人の学問は完全に身に具わっているのである。
――『ダンマパダ』 第二二章 第八節
■逐語訳
- 学問はわずかであっても:理論や知識が少なかったとしても、
- 徳行に専念していれば:誠実で正しい行動を継続していれば、
- 世の人々は称賛する:社会はその人を評価し、尊敬する。
- 学問が完全に身に具わっている:その知は行動として体現され、真の理解に到達している。
■用語解説
- 学問(パーリ語:パリッヤッティ):知識や理論。必ずしも量ではなく、質や体得の深さも含意。
- 徳行(グナ・チャリヤー):倫理的行動・誠実さ・日々の生活で善を行うこと。
- 称讃:表面的な賞賛ではなく、その人格を見た真の尊敬。
- 完全に身に具わる:知識が単なる理解にとどまらず、人格と一致している状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえ学識が少なくとも、その人が善き行動を実直に行っていれば、
人々はその生き方を称え、その人を尊敬する。
そのような人物の知識こそ、真に身についた知識であり、智慧となっている。
――仏陀はこのように説いています。
■解釈と現代的意義
この詩句は、「知識の多寡」よりも「行動の誠実さ」こそが人を際立たせるという価値観を示しています。
現代では「高学歴」や「多数の資格」などが注目されがちですが、本当に信頼される人とは「有言実行」「誠実な行動」で人を納得させる人です。
また、学ぶことの目的は「知ること」ではなく「生き方を正すこと」であるという、仏教における学問観が明確に表れています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
人材評価 | 履歴書や経歴よりも、実際の態度・責任感・誠実さが、組織にとって最も価値のある資質。 |
ロールモデル | 博識でなくとも、行動で価値を示す人が、チームの信頼と尊敬を集める。 |
学びの本質 | 書籍や研修で学んだことを、すぐに行動に反映させる者が「本当に学んだ者」。 |
経営の信頼性 | 経営理念を多く語るよりも、日々の細かな実践でこそ、その理念が生きていると認識される。 |
■心得まとめ
「賢さは口でなく、歩みにあらわれる」
知識がどれほどあっても、それが行いに現れなければ、信頼も尊敬も得られない。
しかし、学びがわずかでも、それを誠実に実践する人は、知を超えた価値を生み出す。
人格こそが最大の学びの証であり、行動こそが智慧の結晶である――これが仏陀の教えです。
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