目次
📜 引用原文(日本語訳)
第二〇章 怒り三
「怒りを滅ぼして安らかに臥す。怒りを滅ぼして悩まない。
毒の根であり、甘味を害なうものである怒りを滅ぼすことを、聖者らは称讃する。
修行僧らよ。それを滅ぼしたならば、悩むことがない。」
🔍 逐語訳(逐語・一文ずつ訳)
- 「怒りを滅ぼして安らかに臥す」
怒りの感情を根絶すれば、夜も静かに、安らかな眠りが得られる。 - 「怒りを滅ぼして悩まない」
怒りが消え去れば、悩み・後悔・葛藤に苛まれることがなくなる。 - 「毒の根であり、甘味を害なうものである怒りを滅ぼすことを、聖者らは称讃する」
怒りは毒の根のように内面を蝕み、人生の甘さを台無しにする。その怒りを制する者を、賢者たちはほめたたえる。 - 「修行僧らよ。それを滅ぼしたならば、悩むことがない」
修行に励む者たちよ、怒りを消せば、もはや悩みに心乱されることはない。
🧩 用語解説
- 怒り(瞋):仏教における「三毒」の一つ。理性を曇らせ、対人関係や内面に深いダメージを与える感情。
- 滅ぼす(ニローダ):根源から断ち切り、完全に取り去ること。単に抑えるだけではなく「消滅させる」こと。
- 毒の根:怒りが内面を静かに蝕み、周囲にも害をもたらす本質を象徴的に示す表現。
- 甘味を害なう:本来の幸福や喜びの味わいを、怒りによって台無しにしてしまうこと。
📝 全体の現代語訳(まとめ)
怒りを完全に断ち切った者は、心安らかに眠り、悩みも抱えない。怒りは毒の根であり、人生の楽しみや喜びを損なうものだ。ゆえに聖者たちは、怒りを滅ぼす者を称賛する。修行者たちよ、怒りを克服すれば、もはや悩みに心を乱されることはない。
💡 解釈と現代的意義
怒りは一瞬の感情でありながら、その余波は長く尾を引きます。眠れない夜、言わなくてよかった一言、壊れた信頼関係──そのすべての原因が怒りであることは少なくありません。本節は、怒りを根本から断つことが、心の平穏と人間関係の調和、ひいては人生の甘さを守る道であることを教えています。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
感情のコントロール | 怒りに任せた発言やメールは、チームの信頼と成果を台無しにする。冷静な沈黙や対話が有効。 |
リーダーシップ | 部下や同僚のミスに怒るのではなく、原因を共に探り、成長を促す姿勢が尊敬を生む。 |
ストレス対策 | 怒りを感じたら、その場を離れたり、深呼吸したりして「その感情を滅する」習慣が、心の健康を守る。 |
組織文化の形成 | 怒りを許容する職場は萎縮と離職を招く。「怒らない強さ」が文化となることで心理的安全性が生まれる。 |
🧠 心得まとめ
「怒りを滅する者こそ、静けさと喜びに生きる」
怒りは、見えない毒のように自他を蝕む。賢者とは、それを制する者である。感情を爆発させるのではなく、心の中で「滅する」――それこそが、現代社会における本当の強さであり、リーダーシップの本質である。
コメント