目次
📖 引用原文(日本語訳:A・B・Cを含む統合訳)
一一
何となれば、その人はその乗物によってはその境地(=ニルヴァーナ)に達することはできない。
おのれ自らをよくととのえて、一切の苦しみから脱れる。
…また、その境地に向かうためには、一切の繁栄(=世俗的成功)をも捨て去る。
——『ダンマパダ』第十九章 第十一偈(A・B・C)
📘 逐語訳(文ごと)
- どれほど立派な乗物に乗っても、その人は悟り(ニルヴァーナ)には至らない。
→ 外的手段・物質的力では、心の自由には到達できない。 - 自分自身を深く調えた人だけが、すべての苦しみから抜け出すことができる。
→ 苦悩の根本は外ではなく内にある。 - また、その人は悟りに至るために、一切の繁栄(世俗的成功・執着)をも手放す。
→ 解脱には、快楽も地位も名誉も超越する覚悟が求められる。
🧩 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
乗物(ヴァーハナ) | 外的手段(立場、支援、ツール、儀礼、組織など)の象徴。 |
境地(ニルヴァーナ) | 苦しみ・執着・無知を離れた心の究極の安寧。 |
苦しみ(ドゥッカ) | 生・老・病・死、欲望や比較・失敗による心の不安定さ。 |
繁栄(サンパッティ) | 地位・財・権威・名誉・快楽など、執着の対象となる成功。 |
💬 全体の現代語訳(まとめ)
いかに優れた外的な手段を持とうとも、それによって真の悟りに達することはできない。
自らの心を深く調え、執着を離れた者だけが、あらゆる苦しみから自由になり、さらには世俗の成功や栄光さえも超越して、静けき解脱の境地に至る。
この偈は「真の自由とは、内なる完成からのみ生まれる」と断言している。
🧠 解釈と現代的意義
この偈は、これまでの流れを最も端的に総括しています。
外に求めている限り、苦しみは続く。
真の自由と幸福は、「自己修養による内的完成」によってのみ得られるというこの思想は、
現代社会における「外的成功への執着」への深い警鐘とも言えます。
しかもここでは、単なる苦しみの解放にとどまらず、「繁栄をも捨てる」=成功さえも執着の対象にしてはならないという、極めて高次の精神的要求が提示されています。
🏢 ビジネスにおける適用
観点 | 適用例 |
---|---|
成功への執着からの自由 | 昇進・売上・表彰などに依存せず、仕事そのものに価値を見出せる人は、真に安定した成果を出す。 |
感情・欲望のマネジメント | 苦しみの多くは「思い通りにならない」ことから生まれる。執着を減らすことで、ストレスは大きく減少する。 |
意志の持続と柔軟性 | 周囲の評価に一喜一憂せず、信念に基づいて冷静に動けることが、持続的リーダーシップの鍵になる。 |
生き方としてのプロフェッショナリズム | 「整った自分」を基盤に働く人は、仕事・人間関係・変化の全てにおいて安定し、周囲に安心感を与える。 |
🧭 心得まとめ
「すべてを持つことより、すべてを整えることに価値がある」
外の豊かさや成功に惑わされず、
心の状態こそが、幸福と自由の本質であると知る者は、
もはや誰からも、何からも縛られない。
「己を調えた者は、苦しみも、繁栄すらも超えてゆく」
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